「医療が必要な人取りこぼさない」 コロナの自宅療養を支援する訪問看護 高齢者の生活と医療を両立


この記事を書いた人 琉球新報社
新型コロナに感染した90代の男性に話しかけながら、健康状態を確認する看護師(左)=那覇市(提供)

 新型コロナウイルスの新たな流行により、在宅で訪問看護を受ける高齢者や小児、難病患者などの感染も確認されている。重症化リスクがあるため家族も不安になりやすいが、利用者の生活を医療の視点で見守ることが訪問看護の役割。生活環境や本人の意思を尊重して自宅療養でも対応できるほか、入院する場合でも患者や家族の負担が増えないよう寄り添っている。

 90代の一人暮らし高齢者の感染にも対応

  訪問看護ステーションはえばる(城間忍所長)では7月、認知症や糖尿病を患う90代の独居男性が新型コロナに感染した事例に対応した。

 自宅療養で対応可能とみられたが、不安を抱く離れて暮らす家族が医師に要望し、県が設置した新型コロナ感染者ケアステーション(ケアステ)に入所した。しかし、感染者の増加で翌日には退所となった。療養環境の変化で男性はストレスを抱えていたが、家族の介護と合わせて1日2回の訪問看護を実施。症状が安定していたため何事もなく治療を終えた。

 ステーションはえばるの看護師、真名井栞さんによると、認知症のある利用者は療養環境の変化で症状が進行し、家族の介護負担が増える例もあるという。療養環境を維持する支援が望ましいこともあるため、真名井さんは「今回は家族と調整する時間が少なかったが、平時から本人の状態を見ているので、緊急時は利用している訪問看護ステーションに相談してほしい」と話す。

 平時からの把握が強み

 県看護協会のコーディネーター志茂ふじみさんによると、県内の訪問看護事業所は2010年に約40カ所だったが、現在は5倍以上の約240カ所まで増加しているという。そのうち、約7割がコロナ患者に対応できる。

 訪問看護は、事前に看護計画を作成し、24時間365日の相談対応や緊急搬送などにも対応できる。状態悪化で頻回の訪問が必要な場合は、かかりつけ医も対応する「特別訪問看護指示書」が出される。ただ、平時から利用者の健康状態を把握し、緊急時の対応も立案されていることから、医師が出動する事例は多くないという。

 志茂さんは「利用者の生活を医療的視点で見つめ、治療に関する情報をかみ砕いて説明できる看護師の存在は、利用者家族が在宅で療養を継続する大きな支えとなる。医師の負担軽減になるほか、地域に点在する訪問看護事業所を活用してもらえれば、医療が必要な人を取りこぼすことも少なくなる」と語った。

 (嘉陽拓也)