【識者談話】ランドセル購入、当然視しないで 福嶋尚子(千葉工業大准教授)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
福嶋尚子(千葉工業大准教授)

 近年のランドセルは、多様なデザインが出てきたことや機能性の向上によって大量生産ではなくなった。作る数を限定して販売することで全国的にランドセルの価格は6万~7万円台が基本になっている。多少高くてもランドセルを買う理由は一つ目に小学校入学が「お祝い事」という認識だということ、二つ目に親自身が負担するのではなく、祖父母が購入する家庭が多いことが挙げられる。しかしその一方で経済的に厳しい家庭は安いランドセルを買ったり、お下がりを使ったりしており、ランドセルの購入状況にも二極化が見られる。

 現状として経済的に厳しい家庭は、行政からランドセル購入にかかる支援を受けることができる。しかし、小学生にとってランドセルは指定品ではない。行政が支援することで、ランドセルが指定品になってしまうのではないか。購入補助支援などではなく、ランドセル以外のかばんを選びやすい環境をつくることが大事であり、子どもの権利保障にもつながる。

 行政だけでなく、日本人全体が小学生といえばランドセルと思い込んでいる。そのため、ランドセルを持っていない子を見ると貧困だから買えなかったという見方になってしまう。

 ランドセルの購入を当然視し、全員で押し付け合うことが新1年生を持つ世帯の負担になっている。ランドセルだけを悪者にするのではなく、ランドセルへの固定概念を捨てる必要がある。
 (教育行政学)