【深掘り】日本、豪州、フィリピンで同時に…米海兵隊が演習で示した「分散展開力」とは


この記事を書いた人 琉球新報社
普天間飛行場所属オスプレイから降下する海兵隊員。第3海兵沿岸連隊も参加=12日、フィリピン

 在沖米海兵隊の第3海兵遠征軍は今月初めから、沖縄をはじめとして日本、フィリピン、オーストラリアなどの各地で同時期に複数の演習を実施した。オスプレイが飛来した久米島町での訓練もこの一環だ。他の軍種や他国の部隊と連携しながら部隊を分散展開し、相手の脅威圏内で戦う能力を誇示して中国をけん制する。米国が中国への対抗姿勢を強め、沖縄を巻き込む形で最新の戦略を実践しようとしている。拠点の一つとして重視し続け、沖縄の基地負担が増す恐れがある。

 特に演習が集中したのは10~17日。第3海兵遠征軍広報は一日も欠かさず報道機関向けの発表やSNSで各地の様子を発信し続けた。離島などに分散して戦う「遠征前方基地作戦(EABO)」を中心に、空軍など他の軍種に加えて同盟国との連携強化に力を入れる姿が浮かび上がった。

 太平洋各地での演習「ノーザンエッジ(NE)23ー2」は7月2~27日。米空軍によると、通常アラスカで実施される訓練を、初めて別の地域で実施している。各基地の航空機が他の拠点へ展開しており、空軍嘉手納基地でも離着陸が繰り返された。伊江島では海兵隊が多用途レーダーを展開する様子が公開された。従来のレーダーが持つ複数の機能を統合し、捕捉範囲を拡大したもので、輸送のしやすさからEABOに重要だとされる。

 海兵隊は10~17日、日本各地で陸上自衛隊との共同訓練「レゾリュート・ドラゴン23」を実施した。米軍牧港補給地区などに指揮所を設置して連携を図った。16日には陸自西部方面総監の山根寿一陸将が米軍キャンプ・ハンセンでジェームズ・ビアマン第3海兵遠征軍司令官と面談し、連携強化の方針を確かめた。

 沖縄と台湾を挟んで南側のフィリピンでは6~21日、海兵隊とフィリピン軍の共同演習「MASA23」を実施。ハワイに拠点を置く第3海兵沿岸連隊(MLR)の隊員が米軍普天間飛行場所属のMV22オスプレイに搭乗し、ロープを使って高速で降下する様子などが確認された。2025年までに沖縄の一部部隊をMLRに改編する計画を踏まえているとみられる。

 オーストラリアでも普天間飛行場のオスプレイが活動し、在沖米海兵隊が敵の飛行場を攻撃して占領する訓練を実施した。分散して戦う際に展開拠点を確保することを想定している。

 米軍の戦略に詳しい沖縄国際大の野添文彬准教授(国際政治学)は同時期に複数の演習を実施したことについて「米国は軍種間の統合に加え、同盟国と連携する『統合抑止』を重視している」と説明。「同盟国と連携して分散展開できることを中国にも示したいのだろう」と分析した。

 久米島では海兵隊がEABOに関連する訓練を実施したが、人員の輸送に空軍のオスプレイ(CV22)を使用した。野添准教授は「海兵隊は特に空軍と連携を強めている。空軍もCV22の活動を沖縄で増やす足掛かりにするのではないか」と指摘した。
 (明真南斗、知念征尚)