人間国宝に祝嶺恭子さん(首里の織物)、大湾清之さん(琉球古典音楽) 文化審議会が答申


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「人間国宝」に認定される(左から)祝嶺恭子さん、大湾清之さん

 国の文化審議会(佐藤信会長)は21日、国指定重要無形文化財「首里の織物」(各個認定)保持者=人間国宝=に染織家の祝嶺恭子氏(86)=那覇市=、国指定重要無形文化財「琉球古典音楽」(各個認定)保持者=人間国宝=に琉球古典音楽安冨祖流絃聲会の大湾清之氏(76)=読谷村出身、那覇市在住=を認定するよう永岡桂子文部科学相に答申した。両氏が認定されると県内の人間国宝は10人、故人も含めると17人となる。 内訳は工芸技術分野で6人、芸能分野で11人となる。工芸技術分野での人間国宝の認定は、2000年に「芭蕉布」で認定された平良敏子氏以来23年ぶり。
 

「首里の織物」の人間国宝に認定される祝嶺恭子氏(提供)

 今回認定された「首里の織物」は、琉球王国時代に首里を中心に発展した織物で王族や士族の衣服として着用されてきた。1998年に重要無形文化財に指定されたが、2022年3月に保持者の宮平初子氏の死去により指定が解除されていた。今回改めて指定し、祝嶺氏を保持者として認定する。

 文化審議会は祝嶺氏について「首里の織物の制作方法を高度に体得した染織作家として活躍し、卓越した技量を示している」「沖縄の伝統的な染織品の調査も精力的に行い、その成果を自身の創作へと発展的に展開させている」と答申した。
 

「琉球古典音楽」の人間国宝に認定される大湾清之氏

 「琉球古典音楽」は、琉球王国時代に士族が中心となって継承し、現在に伝承される伝統音楽。三線と密接に関わって発展し、箏や笛、太鼓などを伴奏楽器に加えて発展した。「琉球古典音楽」での認定は、死去により解除された島袋正雄氏、照喜名朝一氏を含めると、2019年の中村一雄氏に続いて4人目。芸能分野での認定は2年ぶりとなる。

 文化審議会は大湾氏について「奥行きのある伸びやかな歌声と細部まで行き届いた確かな三線演奏技法が高く評価されている」「琉球古典音楽の理論的研究にも取り組み、安冨祖流で伝承が途絶えた『仲節』『長ヂャンナ節』などの復曲も行った」と答申した。

 人間国宝は例年、官報告示をもって正式に認定される。今回の告示は10~11月になる予定で、人間国宝は告示後、全国で109人になる。

(田吹遥子)

<2氏の略歴>
しゅくみね・きょうこ 1937年、那覇市生まれ。62年に女子美術大卒業。同年~71年、首里高染織科教諭を務める。77年、全国伝統的工芸品展で内閣総理大臣賞受賞。同年から沖展会員、80年から国展会員。90年に県立芸術大教授就任。91年に県指定無形文化財「本場首里の織物」保持者認定。92年、文部省在外研究員としてドイツで「琉球王朝時代の染色」を調査研究。2003年、祝嶺染織研究所開設。06年から県立芸大名誉教授。15年度県功労者表彰、21年に瑞宝小綬章受章。

おおわん・きよゆき  1946年、読谷村生まれ。66年に琉球古典音楽安冨祖流の宮里春行氏に師事。86年に重要無形文化財「組踊」(総合認定)保持者になる。96年に県指定無形文化財「沖縄伝統舞踊」保持者、99年に県指定無形文化財「沖縄伝統音楽安冨祖流」保持者に認定。2009年に重要無形文化財「琉球舞踊」(総合認定)保持者になった。06年に県立芸術大学助教授、10年に教授に就任し、12年まで勤務した。17年の県文化功労者。
 

<用語・人間国宝>

重要無形文化財に指定された伝統工芸や演劇、音楽などの分野で極めて高度な技術を持つ者として、国が文化財保護法に基づき認定した個人の通称。年1回、有識者でつくる国の文化審議会が答申し、文部科学相が認定する。死亡すると解除される。