「これからって時に難病ALS。悔しい」神奈川で沖縄居酒屋17年の仲宗根さん 店長を引退も次なる目標へ 


社会
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感謝祭で集まったミュージシャンらに感謝する仲宗根真一さん(中央)と妻のかおりさん(前列左から2人目)

 【神奈川】国指定の難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の仲宗根真一さん(54)と、妻かおりさんが切り盛りしてきた沖縄居酒屋「沖縄そば ゆんたく」(川崎市川崎区)の創業17年を祝う「ゆんたく感謝祭2days!」がこのほど、神奈川県川崎市の川崎沖縄県人会館で開催された。約150人が創業者仲宗根さんをはじめ「仲宗根ファミリー」へエールを送った。

 感謝祭は、店のスタッフで料理人の徳元麻乃さんが、2代目店長を引き継いだのを機に開かれた。商いの一線から身を引く決意をした仲宗根さんは「店長の職が終わった僕の存在意義は、ALSを知ってもらい、治療薬の開発につなげること。僕にはそれができる」と述べ、新たな人生の目標を見据えた。

 仲宗根さんが体に異変を感じたのは昨年3月。左手に力が入らなくなり首の頸椎(けいつい)の手術を受けた。9月まで店のキッチンに立っていたが、今年3月の検査で筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された。

 「コロナがあって2年間頑張り、さあこれからというときにALSが見つかった。悔しい」。感謝祭は、そんな事情を聞いたミュージシャンの東風平高根さんら4人が開催を申し出た。

 同店は17年前の7月1日に沖縄物産を販売する店として開店した。初日はどしゃぶりの雨。デビュー間もないミュージシャンの東風平さんが店の前で沖縄ライブをし門出を祝った。

 子どもを預ける実家がない仲宗根さん夫婦は、子どもをみながら店を営んできた。ランチで沖縄そばを提供し、創意工夫を重ねやがて沖縄料理全般を出す居酒屋に。沖縄音楽やお笑いライブも催す居酒屋へと進化させてきた。

 昼も夜も店内は禁煙にしたのも工夫の一端。子ども連れの客が使える「キッズルーム」も設けた。店員も子ども連れで出勤し様子を見ながら働いた。人に優しい店づくりは常連をつくった。

 店の経営の一方、郷里への思いも人一倍。仲宗根さんは、関東最大級の沖縄イベント「川崎はいさいFESTA」の創設者の1人として奔走。沖縄慰霊の日ライブを開催するなど、川崎と沖縄の懸け橋を担った。

 そして以前から温めていた目標がある。いつか本を書きたいと考えている。「これまで経験してきたこと、店のこと、ALSのこと…。僕は発信するため書く」。現在は視線や音声で言語入力する機器の操作法を福祉担当者と相談し、執筆を始める目標を立てている。 (山川夏子首都圏通信員)