「ミドルパワー外交」の実現を 近隣諸国と連携し地域の安定を目指す 日本外交に識者提言 沖国法政研


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日本の安全保障政策について議論する登壇者ら=20日、宜野湾市の沖縄国際大

 「岐路に立つアジアの未来―平和と持続的な繁栄を実現するための日本の戦略」と題した沖縄国際大沖縄法政研究所による研究会が20日、同大で開かれた。登壇者らは台頭する中国やロシアといった脅威に、日本が「大国」として軍事力で対抗するのではなく、「中級国家」として周辺諸国と連携しながら米中衝突を回避し地域の安定を目指す「ミドルパワー外交」の実現を提言した。

 国際政治学を専門とする添谷芳秀・慶応大名誉教授は、政府が昨年12月に閣議決定した安全保障関連3文書について中国や北朝鮮、ロシアといった国の脅威を正面から受け止め相手の能力に応じて日本の防衛力を整備するものだと解説した。

 これに対し冷戦下の日本は中国や北朝鮮、ソビエト連邦といった国に囲まれながらも、脅威に見合っただけの力を持つという考え方は意図的にとらなかったとした。

 日本の国力が相対的に低下する現状での転換に「ロシアや中国に対して自衛力を高めて対峙するというのは身の程知らずの議論だ」と指摘。日本の対米依存がますます深まり「米国がいないと何もできない構図に、自らどつぼにはまっている」と懸念を示した。

 一方、東南アジアや朝鮮半島の国々は歴史的に中国の影響力に警戒感を示しつつも「正面からけんかしようとも思っていない」とし、米国との関係を維持しつつ、近隣諸国と連携し地域の将来像を考えるべきだとした。

 また、沖国大の野添文彬准教授は、米海兵隊が進める「EABO(遠征前方基地作戦)」や米空軍の「ACE(迅速機敏な戦力展開)」といった新しい戦略の下で、沖縄の基地負担が軽減される可能性を質(ただ)した。

 米ジョージ・ワシントン大のマイク・モチヅキ准教授は、EABOやスタンド・イン・フォースの構想は相手の脅威圏内にとどまることを重視しており「沖縄での海兵隊の駐留を減らす意図はあまり見えない」とした。一方でこれらの構想は「非現実的で、台湾有事でもあまり役に立たないのではないか」と指摘した。

 シンポジウムには6氏が登壇した。提言の詳細は24日に発表する。
 (知念征尚)