コロナ禍越え 人と人、地域のつながり再構築を 伝統行事の中止相次ぎ、人間関係希薄に 子どもへの影響大きく 沖縄・浦添で会議


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コロナ禍で伝統行事などが中止となったことの影響などについて議論する円卓会議のメンバー=19日、アイム・ユニバースてだこホール市民交流室

 【浦添】コロナ禍で失った子どもの文化・芸術体験と交流の機会について振り返り、これからのあるべき姿を話し合う地域円卓会議(琉球新報社・スタジオレゾナンス共同事業体主催)が19日、浦添市のアイム・ユニバースてだこホール市民交流室で開かれた。教育関係やメディア関係者らが参加し、コロナで途絶えた人と人とのつながりを再構築していく必要性を確認した。

 円卓会議には那覇市議の中村圭介さん、県立芸大准教授の呉屋淳子さん、多良間村教育委員会の桃原薫さん、琉球新報記者の藤村謙吾さんが登壇した。司会進行をみらいファンド沖縄副理事長の平良斗星さんが務め、スタジオレゾナンス代表で実演家の久保田真弘さんが論点を提供した。

 久保田さんは竹富町西表島船浮を例に伝統行事が中止になったことで、地域のつながりが断絶されたことを紹介。一方で、音楽や伝統行事が「コロナでなくなることはない」と強調した。

 社会教育を担当する桃原さんは国の重要無形民俗文化財に指定されている多良間の豊年祭「八月踊り」が3年連続中止となったことで、島外から赴任する教員などと島の人との関係性が希薄化した現状を報告した。一方、伝統行事の継承の意義について「島の子どもが踊りに携わることで島への誇りを持ち、自信につながる」と語った。

 首里汀良町の獅子舞保存会理事の中村さんは無観客で十五夜獅子舞の奉納演舞と、その様子を動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開したことを紹介。「観客の前で獅子舞ができないのは損失だったが、自分たちでやることは伝統をつなぐことであり、その核は祈りである神事をつないでいくことだ」と語った。

 文化人類学を専門にする呉屋さんは「地域芸能」という概念を提唱し、「伝統芸能や民族芸能といった従来の区分にとらわれず、地域の人が伝統にしたいことを地域芸能としてとらえるといろいろなことが可能になる」と語った。さらに、「コロナが起きる前の状態やつながりがどうだったかを検証しないといけない」と指摘した。司会の平良さんは伝統行事の中止が問題でなく、地域のつながりが切断されたことによる疎外が起きていることが課題とし「どう設計し直してつなげていくのかが問われている」と語った。

 3月まで芸能を担当していた藤村記者は、コロナの影響で子どもを主なターゲットにした公演が2年連続で中止となり、伝統芸能を体験する機会が損なわれたと話した。
 (吉田健一)