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ヤンバルクイナなど希少種の細胞を保存 国立環境研が本部町に凍結保管施設


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絶滅危惧種のヤンバルクイナ(国立環境研究所提供)

 絶滅危惧種の細胞を凍結保存して「タイムカプセル」のように未来に残す国立環境研究所(茨城県つくば市)の取り組みが広がっている。これまでつくば市にしかなかった保存設備が今年6月、本部町でも稼働を開始。国環研は、設備を北海道にも設置しようとクラウドファンディングで資金を募っている。

 沖縄では既にヤンバルクイナの生殖細胞の保存を始めており、今後地元の研究機関などとも連携して、南西諸島に生息する絶滅危惧種の保全が進むと期待される。北海道ではオオワシなどの猛禽(もうきん)類を中心に細胞保存を目指す。

 国環研によると、取り組みは2002年、環境省のレッドリストに掲載されている野生動物の保全活動の一環として始まった。交通事故などが原因で死んだ野生動物の細胞を全国で採取し、つくば市の設備で培養して凍結保存してきた。

茨城県つくば市の国立環境研究所にある細胞の凍結保存設備(同研究所提供)

 今年6月時点で保存されているのは、レッドリストに記載の絶滅危惧種を中心に127種。鳥インフルエンザウイルスを猛禽類やヤンバルクイナの培養細胞に感染させて病原性を調べ、感染対策の強化につなげるなど、絶滅危惧種の生体ではできない実験を行ってきた。生殖細胞を人工授精に用いて個体を増やす試みも進む。

 生殖細胞は凍結までに時間がかかると機能が損なわれやすいため、設備が近くにあるのが望ましい。また、東日本大震災でつくば市の研究所が被災し、温度管理システムが停止して、凍結細胞が一部失われたこともあり、設備の分散化も課題だという。

 北海道への設置に当たり、電気代の高騰で十分な予算確保が難しいとして、国環研は6月下旬、700万円を目標にクラウドファンディングを始めた。8月20日まで。大沼学主幹研究員(野生動物医学)は「凍結保存は生物多様性を守る最後のとりで。動物たちの死を無駄にしないためにも、事業を進めたい」と話す。
(共同通信)