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<ひと>映画「丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全14部」を監督した河邑厚徳さん 戦争とは、映像で伝える


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「原爆の図」や「水俣の図」で知られる画家の故丸木位里、俊夫妻が1980年代に描いた「沖縄戦の図」。その全14部を制作順に跡付けるドキュメンタリー映画を作った。

 夫妻の記録映像や関係者の証言を織り交ぜながら、絵画を提示していく。「国に翻弄(ほんろう)され苦難を背負う民衆の側に立ってきた2人が、どういう試行錯誤をして沖縄戦を描いたのか。その軌跡を映像にしようと考えた」。静かに解説する。

 「1ミリでも戦争に近づかないように発信し続けるのが仕事」と、NHKで長年、ドキュメンタリー番組を手がけた。しかし、南西諸島に基地が広がり、防衛費も倍増。「戦争前夜」といわれる。

 「映像を作る方は全力投球しているが、見る人に本当に届いているのか。新しい方法論が必要では。アートを通して、知性ではなく感性に訴えるものを作れないか」

 そう思い始めていた3年前、宜野湾市の佐喜真美術館で「沖縄戦の図」を見て、衝撃を受けた。極限の生と死を刻んだ巨大な作品群。「絵の中の人たちが語りかけてくるようだった。その声を映像にできれば、戦争とは何かを伝えられる気がした」

 「日本その心とかたち 加藤周一」「アインシュタイン・ロマン」「天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”」など、戦争以外にも扱うテーマは幅広い。次作は写真家の半生をたどる「鉛筆と銃 長倉洋海の眸(め)」。好奇心旺盛で「新しいものをやりたくなる」と笑う。愛知県出身の75歳。

(共同通信)