いのちの現場、停電の影響深刻 医療的ケア児、電気が「命綱」 高齢者施設、エアコン使えず「蒸し暑い」


この記事を書いた人 琉球新報社
非常用電源で廊下の照明と扇風機を稼働させている特別養護老人ホーム。個室の照明が付かないため、廊下のテーブルで食事をする=2日、嘉手納町の「比謝川の里」(提供)

 台風6号の暴風雨で県内各地で停電が続く中、電気が必要な医療機器を使用する医療的ケア児は、電源がある親類宅などに避難している。県内各地の高齢者施設はエアコンが使えなくなり、入所者の熱中症対策に気を遣っている。電源が「命綱」となる人たちは、不安な時間を過ごしている。

 夜間に酸素濃縮器やたんの吸引器などを使用する仲村夢杏さん(6)ら家族は、自宅がある宜野湾市が2日午前1時に停電したため、暴風が続く早朝に医療機器を持って親類宅へ避難したという。父親の翔さん(40)は「停電時は電気を使わない酸素ボンベから使う。酸素濃縮器を動かす蓄電池は最後の手段だ。いずれも限界があるので電源のある場所が必要」と語る。

 災害時には病院に避難したり、関係機関から酸素濃縮器を借りたりするが、翔さんは「まだまだ知らない人も多い。行政に周知を求めたい」と語った。南部医療センター・こども医療センターには、かかりつけの医療的ケア児など4組が避難した。

 長引く停電でエアコンが使えなくなった高齢者福祉施設は対応に頭を抱えている。うるま市与那城屋慶名の「特別養護老人ホームあやはし苑」の職員は、「高齢者の熱中症リスクが心配だ」と話す。那覇市首里の「特別養護老人ホーム大名」では扇風機が不足気味のため、早期の復旧を願う。

 さらに、ガソリンスタンドの休業で両施設とも非常用電源の燃料確保にめどがたっていない。あやはし苑の職員は「燃料の重油が必要だ。開いているガソリンスタンドはないか」と訴えた。

 約70人の入所者がいる特別養護老人ホーム「比謝川の里」(嘉手納町)では、非常用電源で必要最低限の資機材を稼働させつつ、ケアを途絶えさせないため職員が泊まり込みで対応している。

 現時点で燃料や非常食などは不足しておらず、災害時に業務やケアの優先度を定めた「業務継続計画」(BCP)がうまく機能しているという。

 担当者は「コロナ禍で備えた体制で対応しているが、長引くと困る。今後の台風の進路が心配だ」と語った。

 患者20人が入院している公立久米島病院は、2日午前1時から同10時まで停電した。非常用電源が約72時間しか持たないため、エアコンを使用せず、扇風機で対応したという。患者の健康状態に影響は出ていない。
 (中村万里子、嘉陽拓也)