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ビーチ整備はホテル誘致のため? 沖縄・大宜味、住民の一部が反発 総事業費10億に国の補助見込む <ニュースのつぼ>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
人工ビーチの整備予定地=7月27日、大宜味村塩屋

 【大宜味】大宜味村塩屋の「結の浜」で大型リゾートホテルを誘致する計画と並行し、人工ビーチを整備する計画が進められている。村によると、村内には駐車場やシャワーなどの設備が整った海浜がなく、海浜整備を通じて地域経済への好影響や村民が安心して利用できる環境づくりを目指すとしている。一方で一部住民からは、住民説明会が2回しか開催されていないとして、住民への説明が不十分であることや、海浜整備後の管理体制に不明瞭な点が多いなどとして、計画の中止を求める声が上がっている。

 人工ビーチは塩屋漁港の西側に約200メートルにわたって整備される計画だ。総事業費は10億2300万円で、約8億円は国の補助を受け、約2億円が村負担となる。本年度には実施設計調査に入り、2025年度の完成を目指す。ホテルの開業も同年度になる見通し。

 村によると、人工ビーチの整備は1996年~2005年の「大宜味村第三次総合計画」から結の浜の埋め立てに合わせて検討されてきた。しかし村単独での事業化は難しく、国の補助事業の活用が模索されたものの実現には至らなかった。

 村は大型ホテルの誘致と並行して人工ビーチを整備する理由について「ホテル誘致と合わせればビーチ整備も補助事業が受けやすいというのはある」と説明した。また、村が年1回実施する大宜味村子ども議会で、中学生から安全に遊泳できる施設整備を求める声が複数上がったことを理由に、村は施設整備された安全なビーチが必要として「ビーチの整備はホテルのためだけでなく、村民のために進めていく」と強調する。

 一方、計画に反対する住民らは7月24日に「大宜味村結の浜人工ビーチ事業を検証する会」を立ち上げた。同会は計画の問題点として(1)砂浜の浸食(2)ビーチ整備後の管理体制(3)ホテル側が人工ビーチの整備を求めていること―などを挙げる。

 検証する会によると、沖縄総合事務局が22年に大宜味海岸で実施した調査では、砂の移動が活発な状況であることが示された。同会や土木技術の専門家は、工事の影響で潮流が変化し、砂浜の浸食を懸念する。さらに同会は浸食の懸念があるにもかかわらず、砂の補充など必要な整備費について、村の説明がないことにも不信感を抱く。

 呼びかけ人の平良暁志さん(49)は、村が住民説明会でホテル側の要望でビーチを整備すると説明したことについて触れ、「ホテルの要求に応えて村が事業化することは疑問だ。村民のための整備であれば、わざわざ人工ビーチを整備することは現実的なのか」と首をかしげる。

 同じく呼びかけ人の山本大五郎さん(56)は前村政から進められる事業に「行政は何かを止めて話をすることはなく、目的通り進めることしかしていない。事業の検証が必要だ」と訴えた。

 同会では人工ビーチに関する勉強会を9日に実施するほか、計画の断念や中止を求める署名活動をする計画だ。一方、村は説明会の開催などは直近で予定していないという。
 (武井悠)