海ブドウ、ヤイトハタ、車エビ…高級ブランド産地に打撃 農林水産の台風被害、再接近でさらに増大


この記事を書いた人 琉球新報社

 台風6号による各地の農林水産業の被害が次々と明らかになっている。サトウキビは4日時点の県農林水産部のまとめで、全県の被害額は4億7625万円。これに含まれていない久米島での被害について、町は7日時点で約2億5千万円と推計する。全県の被害額も再接近前のまとめで、今後、さらに拡大する見通しだ。水産業関係も深刻で、恩納村漁業協同組合では出荷予定だった海ブドウが停電により全て商品化できなくなり、読谷漁協では、養殖していた高級魚のヤイトハタが停電による機材不良で死滅した。

台風6号の強風で折れたサトウキビ=7日、南城市玉城

 ■キビ栽培、コスト高と人手不足に台風が追い打ち

 台風6号の被害について、南城市のサトウキビ生産組合玉城支部の當眞正德支部長は「倒伏被害や折損被害だけでなく、(株が)新しい葉を作るために糖分を必要とするため、生育が鈍化し、糖度の回復に約3カ月かかる。再度大型台風の接近があった場合は質、量ともに大幅な低下が予想される」と危機感をあらわにした。

 本島唯一の製糖工場のゆがふ製糖(うるま市)は、生産農家の被害について調査しており、1~3日にかけての速報値で10%を超える被害率が報告された。例年の台風被害を上回るという。今後の調査でさらに増える可能性がある。  昨年の収穫量は11万7854㌧と前年度の12万1822㌧から約4千㌧減少したが、今年はさらに収穫量の減少が懸念されている。

 當眞支部長は「コスト高で利益率が下がり、人手不足の深刻化に加えて大型台風の被害に追い打ちをかけられ、生産者は疲弊している」と、次年度以降の栽培を断念し、離農する生産者が増えることを危惧。

 生産者を支援するセーフティーネット基金事業の早期発動と県補正予算による再生産可能な支援策の実施を求めている。

停電による機材停止で商品化できなくなった海ブドウの様子を確認する恩納村漁業協同組合の當眞亮さん=7日、恩納村の海ブドウ養殖場

 ■水産業は停電による養殖被害も

 水産業関係の被害も深刻だ。

 台風襲来前は1日で120㌔ほどの海ブドウを出荷していた、恩納村漁業協同組合では、停電で海水循環機器とエアーポンプが停止。海ぶどうの状態が悪化し、現存のほぼ全てが商品化できなくなったという。今後、約2カ月間にわたって出荷に影響があるとみられ、施設の被害を含めず、約2200万円の被害になるという。同漁協の當眞亮さんは「夏休みで需要も高い時期に出荷が止まるのは非常に痛手だ」と苦渋の表情を浮かべた。

 読谷漁協でも停電による機材への影響で、養殖していた高級魚のヤイトハタ約200匹が死滅した。高波による施設の浸水被害も深刻で、養殖場の床が木の枝や軽石まみれになったという。

 同漁協の前泊克昌組合長は「船や漁具は事前の対策ができたが、停電や高波は対策が難しい。今は後片付けに追われている」と声を曇らせた。

 全国1位の生産量の県の車エビ養殖でも台風の影響が出た。県車海老漁業協同組合によると県内の車エビ養殖場で、停電などによる被害が出ており、被害額は約5千万円になるという。