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<幻影の辺野古マネー・ルポ>名護・羽地内海に朽ちた鉄の塊 操業せず2年以上停泊 「埋め立て工事に砂と砂利納められれば、もうかる」と投資の持ちかけ


この記事を書いた人 琉球新報社
埼玉県の運送会社が購入した船舶の周囲を確認する海上保安署の職員=7月13日、羽地内海

 【名護】名護市の仲尾次漁港からチャーターした船で約10分、穏やかな羽地内海を進むとアンカーを打ち、停泊する大型船の姿が見えてきた。約2千トンの巨大な鉄の塊。詐欺に遭って船を購入したと主張する、埼玉県の運送会社の訴えを受け、7月13日、船の内部を確認するために訪れた名護海上保安署に同行した。2020年に売買契約を結んだ後、一度も操業せず、2年以上にわたり停泊する船の中は、想像以上に朽ち果てていた。

 船の手すり部分はさびによってゆがみ、床には赤茶けたさびが至る所に散らばっている。穴が開いた場所をテープでふさぎ、その上からペンキを塗り直して、塗装したとみられる箇所もあった。砂利採取の関連機材も、当初から動くものではなかったという。 海砂利採取に向けて、運送会社が発注したというエアコンの室外機だけが真新しく、船と不自然なコントラストを生んでいた。

砂利採取を名目に埼玉県の運送会社が購入し、一度も操業できないまま停泊する大型船=7月13日、羽地内海

 「なぜだまされたのか分からないと思われるかもしれない。だが、従業員を紹介され、船で事業が行われているように見せかけていた」。船を案内しながら、運送会社の担当者がつぶやいた。 購入費用5億円を取り戻すめどが立たず、撤去にも多額の費用がかかるとみられ、簡単には撤去が難しい状況だという。担当者は「油漏れをさせるなど、悪意を持った行為をされないか心配だ」と不安そうに語った。

 運送会社が県内の海運会社「尚圓(しょうえん)海運」と船の売買契約を結んだのは2020年12月。50代の男性を介して、砂利採取船のオーナーとなる話を持ちかけられたことが、きっかけだったという。関連した訴訟や告訴状などの関連資料には、運送会社代表と、この50代男性とのやりとりが記されている。

 運送会社は50代男性から「辺野古基地の埋め立て工事で砂と砂利を納めることができれば、もうかる。年間24億~28億円の売り上げになるから、その売り上げを尚圓海運と折半しないか」などと持ちかけられ、契約したという。船の購入費以外はこの男性が支払うなどと説明していた。だが、5億円にも上る船の購入費以外にも、修理費用や従業員の給与の支払いなどを求められた。経費はどんどんかさんでいった。

 さらに男性は、恩納村でリゾート開発への参画も提案してきた。実在する大手ハウスメーカーと共同で開発すると説明し、運送会社側は男性へ土地購入費として5億6千万円を支出。しかし、この大手ハウスメーカーが事業から撤退し、計画は頓挫した。運送会社代表者は関連した訴訟でこう陳述している。「当社は21年8月まで、(50代男性に)お金をだまし取られてしまった。(50代男性は)本当に演技派で、劇場型の詐欺にあったような気分だ」

 (「幻影の辺野古マネー」取材班)