台湾の国民党政権が多くの住民を殺害した1947年の「2・28事件」を巡り、事件で犠牲になったとして台湾政府に認定を求めている県出身者の遺族らが16日、県庁記者クラブで会見し、台湾政府行政院に3度目の上訴を行ったことを明らかにした。同日県庁に照屋義実副知事を訪ね、理解や協力を要請した。
認定を求めているのは与那国出身の仲嵩實さん=当時(29)=と石底加禰(かね)さん=当時(39)=の遺族で、仲嵩さんの長女・徳田ハツ子さん(86)と孫の當間ちえみさん(66)、石底さんの三女の具志堅美智恵さん(82)。
犠牲者の認定作業は、行政院が設立した財団法人228事件記念基金会が行い、結果に不服がある場合は行政院に上訴する仕組み。徳田さんと具志堅さんは、7月6日付で基金会から、仲嵩さんと石底さんについて「事件の犠牲者と認定しなかった」という通知を受けた。8月10日付で上訴したという。
2遺族は2016年にそれぞれ認定賠償を申請。しかし死亡届に死因が「マラリア」と記載されていることを理由に基金会は申請を2度却下した。遺族側は22年、仲嵩さんを船長として雇っていた台湾人船主が仲嵩さんは「兵士に銃殺された」と記した「証文」の写しが見つかったため、新たな証拠として台湾当局に提出した。今回、基金会の決定に証拠の評価は示されていない。
徳田さんは「自分も高齢となり、亡くなる前に認定してほしい」と訴えた。具志堅さんは「父の話になると涙が止まらない」と涙ぐみながら支援の声に謝意を示した。
(中村万里子)