対馬丸記念館「当事者の国、県で運営を」 遺族ら高齢化、維持管理に課題 撃沈から79年


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慰霊祭を終え、報道陣の取材に応じる対馬丸記念会の高良政勝代表理事=22日、那覇市若狭

 対馬丸事件から79年となり、事件を展示で伝える対馬丸記念館の管理運営の中心となっていた遺族や事件を直接知る体験者が減る中、同館の維持管理体制が課題となっている。

 対馬丸記念会代表理事の高良政勝さん(83)は22日に開かれた慰霊祭の追悼のあいさつで、記念館の今後の管理運営に言及し、国や県の一層の力添えを求めた。式典後の取材に、「国策で疎開を推進した当事者である国、県が責任を持って記念館を維持してほしい。記念館を平和のモニュメントとして存続させてほしい。われわれはあと10年も現役ではいられない」と訴えた。

 対馬丸記念館は事件から60年となる2004年8月22日に開館した。沈没した対馬丸を技術的に引き揚げられない代わりの慰謝事業として、全額国の補助により総工費約2億3000万円をかけて造られた。遺族会を前身とする財団法人対馬丸記念会が管理運営を担い、現在は公益財団となっている。

 遺族らの高齢化による管理運営体制への懸念については、館の建設計画が議論された県議会でも00年頃から質疑されていた。

 対馬丸記念会の22年の収支予算によると、年間予算は計4300万円。このうち入館料や寄付金、協力会員の会費からなる法人会計は約1300万円で、光熱費などの管理・維持費や1人だけの正職員の人件費に充てる。年間予算のうち残る約3000万円は補助金で、主に展示関連や来館者や児童生徒らを想定した対馬丸の継承事業などに充てられるほか、同事業に関わる業務委託の学芸員、事務員などの人件費も賄う。補助金の内訳は内閣府が約1962万円、厚労省が487万円、沖縄県が600万円。

 対馬丸記念会の外間邦子常任理事は記念館について「子どもたちが平和な未来を学ぶ場所としてあり続けたい。現在、遺族と協力会員の力で運営できているが、今後は国と県が運営することを望む」と話した。