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県外から3世代で来館も「大勢の犠牲者を伝えて」 対馬丸の慰霊祭に多くの遺族の姿


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寄贈した遺品や資料を見る楠本文郎さん(右)と孫の健生さん(中央)、娘の香織さん=22日、那覇市若狭の対馬丸記念館

 那覇市若狭の旭ケ丘公園にある小桜の塔で4年ぶりに対馬丸の慰霊祭が開かれた22日、公園内に建ち、事件を伝える対馬丸記念館には県内外から子や孫を連れた多くの遺族らの姿が見られた。

 和歌山県の楠本文郎さん(69)は娘の香織さん(42)と小学1年生の孫の健生さん(6)を連れて訪れた。楠本さんの大叔母は、長男の一雄さん(当時20歳)と長女の貞子さん(当時12歳)を亡くした。対馬丸記念館には楠本さんが寄贈した、きょうだいに関する遺品や資料数十点が展示されている。

 楠本さんの大叔母夫婦は宮古島で雑貨商を営んでいた。長男は入隊のため、長女は学童疎開のため対馬丸に乗船した。しかし消息が途絶え、大叔母は鹿児島県庁で対馬丸の乗船名簿を調べ、死を知ったという。44~45年の2年間で3人の子どもを失い、100歳で亡くなるまで和歌山県の海岸近くで海を見つめながら一人で生活した。

 楠本さんは「記念館が存続し、これだけ大勢の犠牲者がいることを伝えていってほしい」と話した。
 (中村万里子)