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「日本代表にもチャンス」元バスケ日本代表・沖縄市出身の佐久本智さん 地元開催に「感慨深い」


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プレーオフ・ファイナル初戦で指揮する佐久本智さん(中央)=4月15日武蔵野の森総合スポーツプラザ(ENEOSサンフラワーズ提供)

 FIBAバスケットボールワールドカップ(W杯)2023が開かれる沖縄市出身で、1998年の世界選手権(ワールドカップの前身)ギリシャ大会に出場した元バスケットボール選手の佐久本智さん(51)は、地元開催に「感慨深い」と語る。現在は女子バスケWリーグのENEOSサンフラワーズで監督を務め、優勝に導くなど指導者としての実績も残す。世界の厳しさを知りつつも、沖縄で開かれる大会が「選手、子どもたちに大きな影響を与える」と期待を寄せる。

 美東中卒業後、福岡大大濠高に進学。日大を経て、ジャパンエナジーやいすゞ自動車などトップチームに所属した。14年からENEOSでアシスタントコーチを務め、監督に就任した22年シーズンで優勝という結果を残した。ENEOSは父親が沖縄市出身の渡嘉敷来夢選手も所属する。

 佐久本さんが出場した98年世界選手権に向けた代表候補合宿は県内で行われた。当時の本紙紙面には「ディフェンスを買われてメンバー入りしたので、守りをアピールしたい。小さい子の目標になるように頑張りたい」との佐久本さんのコメントが、練習時の写真付きで掲載されている。

 当時の代表メンバーには「富永啓之」の名前がある。佐久本さんの日大時代の一つ下の後輩で、W杯で活躍が期待される富永啓生選手(ネブラスカ大)の父だ。

 佐久本さんがW杯で注目するのはNBAで活躍する渡辺雄太選手とアメリカの大学で奮闘する富永選手。「チームを引っ張る存在だ」と語る。

 日本代表を指揮するトム・ホーバス監督はかつてENEOSでヘッドコーチなどを歴任。コーチングなどを学んだ佐久本さんは「トムさんが言うように3ポイントをきちっと決める場面をいくつもつくっていければ、勝利につながる」と日本代表にもチャンスはあると断言する。
 (仲村良太)


<一問一答>世界のプレー未来につなげ スピード、技術面でカバー

佐久本 智さん

 佐久本智さん(51)は現在、女子バスケWリーグのENEOSサンフラワーズで監督を務める。世界で戦った経験のほか、地元で開かれるW杯にどんなことを期待するか聞いた。

 ―1998年の世界選手権ギリシャ大会に出た。

 「31年ぶりの大会参加だった。当時、ヨーロッパの選手とプレーすることはなかなかったので対戦した時は高さも、パワーも、技術的な面でも段違いだった。自分のプレーなんか通用しなかった」

 ―優勝、準優勝のユーゴスラビア、ロシアとも対戦した。

 「強かった。サイズの割には動けるし、シュート力もある。センター陣でも外角のシュートが得意だった。ヨーロッパの選手はこんなにレベルが高いんだと。アメリカばかりみていた気がしたがヨーロッパもすごい。派手さはないが、俊敏で組織だったプレーをしていた」

 ―当時と今の日本代表はどう変わっているか。

 「スキル的にはだいぶ上だと思う。個人スキルもしっかりあって、それが組織に組み合わされば、結果を出せるのでは。当時に比べてシュート力もあるし、個人技もレベルアップしている。渡辺雄太選手はNBAで、富永啓生選手もアメリカの大学で厳しい状況の中で、しっかり自分の力を発揮できていると思う。チームを引っ張る存在だ」

 ―日本代表は身長が高くなったわけではない。

 「サイズがない分、スピード、技術面でカバーしてドライブできている。そういう点では海外にも劣らないと思う。(ポイントガードの富樫勇樹選手、河村勇輝選手は小さいが)でもそれ以上のものを持っている。いい形でプレーに生かせれば、あとは決定力だ。トムさんが言うように3ポイントをきちっと決める場面をいくつもつくっていければ、勝利につながる」

 「トムさんが現役時代、トヨタ自動車でプレーしていた頃に対戦した。それが同じチーム(JX―ENEOSサンフラワーズ)でスタッフとしてトムさんの下で勉強させてもらった。思い入れは強い」

 ―大会が佐久本さんの地元、沖縄市で開催する。

 「沖縄県出身者として、25年前の世界選手権に出してもらった。その大会がまさか自分の地元、生まれ育った場所で行われることは感慨深い。県バスケットボール協会や県民の皆さんのバスケットへの熱い思いも開催につながったのではないか。もともとバスケットが盛んな地域だし、Bリーグの琉球ゴールデンキングスもとても人気がある。これを機に、よりいっそう盛り上がってほしい」

 ―今大会は沖縄出身者は選ばれなかったが、今後の期待は。

 「毎年ではなくても選手を継続して出すとか、選ばれるようになってほしい。今大会はすごい勉強になるだろうし、刺激を受ける大会になると思う。選手だけでなく、県内でバスケットを一生懸命頑張っている子たちに影響を与えるだろう」

 ―沖縄でバスケットをする子どもたちに一言。

 「まずはバスケットを楽しんでほしい。子どもたち、若い子たち、これから上を目指していく選手たちは基礎をしっかり身につけてほしい。世界選手権を経験したが、簡単にボールがもらえなかった。ドライブしてゴールに向かっているつもりでもベースライン側、サイドライン側に押し込まれてしまった。パスの精度、速さ、ドリブルを強く、低くつくなど基本的な練習に取り組んでほしい」
 (聞き手 仲村良太)