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紅型技法は沖縄の“外交官” イギリス大英博物館への収蔵決まった照屋勇賢さんに聞く


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大英博物館収蔵作品と同じ型紙を用いた「結い、YOU―I(Shoulder Pattern Double#2)」と照屋勇賢さん=16日、南風原町の画廊沖縄

南風原町出身の現代美術家、照屋勇賢さん(ドイツ・ベルリン在住)の作品「結い、YOU―I」がイギリスの大英博物館に収蔵されたことを記念する展覧会が、27日まで同町の画廊沖縄で開かれている。「結い、YOU―I」は紅型の技法で沖縄の基地問題を描いた作品。展覧会では同じ型紙を使った平面作品など30点を展示している。照屋さんに紅型を取り入れたきっかけや、今回の展覧会の特徴などを聞いた。 (聞き手 伊佐尚記)

―大英博物館に作品が収蔵されたことへの受け止めを。

「この作品がコレクションになるということは、沖縄の置かれている状況を世界が見ている証しだと感じてる。沖縄への関心が高まっているのは、博物館・美術館で脱植民地主義が主流になりつつある動きとも無関係ではないと思う。ヨーロッパで沖縄は『長寿の島』というイメージだったが、これからは平和を諦めない、戦争をさせない『命どぅ宝』のイメージが伝わっていくとうれしい」

―作品に紅型を取り入れたきっかけは。

「2002年のVOCA展(上野の森美術館)で発表した『結い、YOU―I』で初めて紅型を取り入れた。自分の絵を見せるというより、沖縄の歴史観を東京に持っていくことを意識していた。現代の沖縄を古典のエネルギーに乗せて、東京の美術館に来る人たちに焼き付けてもらおうと思った。大英博物館に収蔵された『結い、YOU―I』は同じ型紙で22年に染めたものだ」

「VOCA展に出した時はアメリカにいたが、渡米前に首里城公園で舞台を手伝うバイトをしていた。古典舞踊を踊る人がいて、優雅なハイアートの世界がそこにあった。そういう着物などの美しさが時事的な話と全然関係ない場所で存在しているように思えたので、一緒にしたい、または対比させていきたいという気持ちがあった」

―紅型作家の金城宏次さんと協働している。

「型紙の彫りは最初から宏次さんで、後に染めもお願いした。米軍基地をテーマにすることに(他の作家からは)『ノー』と言われ、宏次さんだけがOKしてくれた。当時、宏次さんも独立して新しいことに挑戦し始めた時期だった」

―今回はどういう作品を展示しているのか。

「アメリカ、ヨーロッパに軸足を置いて制作した作品を集めている。(海外で活動した)この20年間のプロセスが見えるかと思う。例えば、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの『I have a dream』という言葉を紅型で染めた旗を展示している。弱い者たちが結束するための希望の言葉を沖縄のやり方で発信している」

―たくさんの国旗を並べた「Color the world」という作品がある。

「01年の米同時多発テロ直後にニューヨークにいた。テロから数年間、至る所が星条旗で埋まっていた。ある意味、寛容さに欠けた、他者を排除していく姿勢にも感じた。他の国の旗も一緒に、同じサイズで平等に掲げたいと思った」

―エリザベス女王を紅型で描いた作品は。

「22年にイギリスであった個展に出品した。エリザベス女王はイギリスの象徴であり、すごく魅力的な題材だ。紅型技法という沖縄の“外交官”がイギリスという大帝国をどう見るのか、紅型の様式がイギリスをどのように翻訳するのか興味があった」

「今回は個人でコレクションしやすい小作品を集めている。11月から来年1月まで県立博物館・美術館主催の個展も開かれる。そこでは美術館で見せるべき作品を選択していく」

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展覧会は午前11時から午後5時まで。入場無料。問い合わせは画廊沖縄、電話098(888)6117。

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 てるや・ゆうけん 1973年生まれ。多摩美術大卒。ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツ修士課程修了。ドイツ・ベルリンなどを拠点に国内外の展覧会に参加。