
米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが27日、オーストラリア北部ダーウィン近くのメルビル島で墜落した。搭乗員23人中3人が死亡し、5人が重症で現地の病院に運ばれるなど大きな事故になっている。オスプレイを巡ってはクラッチを巡る深刻な不具合が判明し、米側は改善策をとったと公にしたばかり。今回の墜落機は米軍普天間飛行場所属ではなかったが、同型機が飛び回る県内では懸念が改めて増している。
「大きなキノコのような黒煙が立ち上がった」
オーストラリア現地メディアは事故の目撃者の声を引用し、事故の大きさを伝えた。
ダーウィンの米海兵隊や現地報道によると、事故は27日午前9時半に発生した。
米豪のほか、インドネシア、フィリピン、東ティモールが参加する「プレデターズ・ラン」と呼ばれる演習の一環で、部隊を輸送している最中だったという。事故原因は明らかになっていない。事故の影響で訓練は短時間、停止されたという。
オスプレイは2012年10月の県内配備から今年で11年を迎えるが、死者を出す重大事故が現在も世界で相次いでいる。
米軍資料によると22年3月にはノルウェー北部で北大西洋条約機構(NATO)の訓練に参加していた機体が墜落し、4人が死亡した。同6月には米カリフォルニア州で墜落し、5人が死亡した。22年だけで計9人が亡くなっている。
カリフォルニア州の墜落事故報告書では、「ハード・クラッチ・エンゲージメント(HCE)」と呼ばれる、オスプレイのクラッチ特有の不具合があったことが明らかになった。
米海兵隊は対策として、一定時間を飛行した機体の特定部品を交換することで症状の再発を「99%低減した」と安全性を強調し飛行を継続していた。そんな中での死亡事故発生で、懸念は増幅している。
一方、防衛省によると県内では28日もオスプレイの飛行が確認された。
防衛省幹部は「事故の詳細が分からなければ、米側に何かを求めるにしても、とんちんかんな内容になってしまうかもしれない」と慎重な姿勢を示した。
これに対し、県は事故原因などを見極めた上で、飛行停止を求めることを含めて検討している。県幹部は「オスプレイの安全性について懸念が払しょくされない中で、飛行が続いている」と強い警戒感を示した。
県政与党議員の一人は2016年に名護市安部の海岸で墜落事故があったことを踏まえ「いずれは我が身の事故だ」と懸念を示した。「市街地上空も飛ぶ沖縄では、よりひどい事故が起きかねない。米軍が『人命を重視する』というなら、せめて原因究明と再発防止が図られるまでは、飛行をやめるべきだ」とくぎを刺した。
(知念征尚、明真南斗)