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笑いと涙、変わらぬ家族愛描く 北谷で「丘の一本松」 沖縄芝居・大伸座の名作


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丘の一本松でスー(右・嘉数道彦)の思いを良助(左・玉城匠)が隠れて聞き、仲直りする親子=13日、北谷町のちゃたんニライセンターカナイホール

 沖縄芝居の劇団「大伸座」(大宜見しょうこ代表)が13日、「丘の一本松」(大宜見小太郎作)を北谷町のちゃたんニライセンターカナイホールで上演した。沖縄で70年以上愛され、千回以上の上映回数を誇る“小太郎劇”の代表作。時代が変わっても変わらない家族の物語に、会場は笑顔に包まれた。

 鍛冶屋を営む頑固者のスーを嘉数道彦、真面目な息子の良助を玉城匠が演じた。仕事のことでケンカした親子の仲を取り持つアンマーは、2年前に男性で初めてアンマーを演じた金城真次。配役が定着した3人ならではの掛け合いは、絶妙な間合いが楽しかった。

  医者(高宮城実人)、馬喰まちゃー(上原崇弘)など、個性的な登場人物も印象的だ。会社員役の城間やよいは、会社の研修生という設定で若々しく登場。物語の幕間でも伊禮門綾と2人で登場し、盛り立てた。

「久米島情話」で自分の婚約者だったカマド小(左・奥平由依)と里之子(右・高井賢太郎)との恋仲を認める太良(中央・上原崇弘)

 家出をした良助は、丘の一本松で出会った老婆(吉田妙子)から、「(一本松)はがんじゅう(頑丈)だから人のためになっている」「親ががんじゅう(元気)なうちに親孝行しなさい」と言われ、自身の父親を重ね合わせる。そこへ良助を探しに来たスーが登場。良助は松に隠れて父が自分への思いを語るのを聞き、父の愛の深さを知る。

 大宜見が「全員が主人公」と語る登場人物たちは、親子が再び心を通わせるためのキーパーソンにもなっている。心温かく、巧みな展開に心をつかまれた。

 同じく小太郎劇の「久米島情話」も上演された。太良(上原)は、婚約者のカマド小(奥平由依)が首里から来た里之子(高井賢太郎)と恋に落ちたと知り、2人の仲を認めて身を引く。潔さを見せながらも、島を出る2人の後ろ姿を見ながら悔しさに布をかむ場面では、太良の人間的な奥行きも感じた。三枚目キャラのひょうきんさとけなげさに会場は笑ったり、涙をすすったり、コロコロと表情を変えた。ストーリーテラーのマカター(伊禮門)や、息子思いの太良の母(瀬名波孝子)も物語に彩りを与えた。

 会場では大伸座74年のあゆみに関するギャラリー展も開催した。
 (田吹遥子)