【嘉手納】琉球史で特筆される1458年の「阿麻和利・護佐丸の乱」。その阿麻和利の一門、嘉手納町の伊波勝男さん(85)は、「一門の誇る一大英雄」として数多くの論考を発表してきた。新たに7月発行された沖縄市の同人誌「談笑」に「阿麻和利物語」を寄稿し、話題になっている。
世界遺産に登録される勝連城跡の10代目の按司であった阿麻和利は、王府転覆を謀った逆臣として組踊でも取り上げられている。しかし、伊波さんは「阿麻和利は“枯レカッチン”(貧窮の勝連)と言われた勝連半島に、中国貿易などで栄華をもたらした古英雄。深慮遠謀が渦巻く時代にあって大望を持つのは当然のこと」と強調する。
嘉手納町屋良を出自とする、阿麻和利の一門の存在はあまり知られてない。このため伊波さんが主導して2010年、屋良後(やらあと)大川按司と庶子の阿麻和利らをまつる屋良グスクにある墓を改築し、系統図、阿麻和利の生涯と門中の家系図、名簿を収録した門中誌も発行した。
並行して近くに拝所も整備した。伊波さんは後世に刻まれる英雄として「阿麻和利讃歌」を詠み、拝所内に掲示した。
21年に発行された「嘉手納町の歴史と文化」でも偉人として生涯の足跡を取り上げている。
大きな喜びとしているのは、うるま市の児童生徒の現代版組踊「肝高(きむたか)の阿麻和利」公演だ。逆賊のイメージを覆す舞台はハワイ公演を含めて全国的に反響を呼び、今月の20、21日には東京公演があった。以前の出演者が公演の成功を祈願するため拝所を訪れたこともある。
もともと教師で町の教育関係で要職を務めた。足元を見据える教材の重要性を痛感し、琉球史、地域史の研究にも没頭、今では“阿麻和利にとりとつかれた男”と評判を呼んでいる。
伊波さんは「一門の誇りだけではなく町の偉人として阿麻和利の足跡、功績を後世に語り継ぐ責務がある」と歴史研究にさらなる情熱を燃やしている。
(岸本健通信員)