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【記者解説】沖縄予算「振興」→「要塞化」への変容懸念 2024年度概算要求


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 2024年度沖縄関係予算の概算要求は、9年ぶりの増額となる2920億円を求めた。概算段階ながら、県が使途を決められる一括交付金も積み増された。内閣府が増額に踏み切った背景には、ウクライナ危機から続く物価高騰がある。同時に内閣府幹部は「地元の要望も考慮した」としており、玉城デニー知事や自治体首長らが繰り返した要請活動も一定程度、実を結んだ形だ。

 ただ、年末に決定する当初予算で概算要求から増額される可能性は低い。県が求めてきた一括交付金で1千億円台、総額で3千億円台には届かない見込みだ。

 気になるのは、昨年末に閣議決定された「国家安全保障戦略」の影響だ。内閣府は、一括計上する沖縄予算に防衛体制強化のための空港・港湾などの公共インフラ整備として金額を示さない「事項要求」を加えるとした。「内閣官房や国土交通省など関係省庁と連携して予算計上を進める」(内閣府幹部)としているが、前提は「デュアルユース」、いわゆる「軍民両用」のための整備だ。政府が進める沖縄を含めた南西諸島防衛強化の流れに沿うもので、政府がこれまで否定し続けてきた基地負担と沖縄振興の「リンク」が、既成事実化される第一歩との懸念が拭えない。

 沖縄振興の根拠法である沖縄振興特別措置法は、沖縄戦を経て米軍統治が続いた「歴史的事情」など、沖縄の特殊事情を踏まえ、沖縄の「自立的発展」を目的とすると明記している。沖縄振興の趣旨から逸脱していないか。沖縄の「要塞(ようさい)化」を進めるための予算に変容しないか。検証と注視が必要である。
 (安里洋輔)