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下戸とスナックと自衛隊 照屋大哲(八重山支局) <ゆんたくあっちゃ~>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

written by 照屋大哲(八重山支局)

 夜になり看板に煌々(こうこう)と明かりがともり始める。石垣市内の繁華街。一角にある小さなスナックで聞いた70代のママの怒りが忘れられない。ある日、知人らに連れられ3次会でそのスナックに入店した。一人で店を切り盛りする彼女は接客や調理で忙しそう。手が止まるのを見計らって、カウンター越しに聞いてみた。「自衛隊、どう思ってますか」。今年3月、陸上自衛隊石垣駐屯地が開設し、石垣島は基地のある島に変わった。一人でも多くの住民の思いを聞きたかった。

 私のひと言を受け、ママは血相を変えた。カウンター席をバンっとたたき、「自衛隊の話はするな」と怒鳴った。私は反省しつつも少し間を空けて再度同じことを聞いてみた。

 ママは観念したのか、落ち着いた口調で答えた。「私は反対」。それ以上に熱を込めて訴えたのは、中山義隆市長が自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票を実施しなかったことだ。「島には賛成の人も反対の人もいるさ。何で意思を示す場すら奪うわけ」。怒りを私にぶつけた。下戸の私はウーロン茶の入ったグラスを握りしめながらひたすら、うなずき続けた。

 いったいどれほどの人がこの島への自衛隊配備に賛成し、反対しているのか。今となっては、もはや分からない。民意が明らかにならぬまま、きょうも島には軍事車両が行き交っている。

(石垣市、竹富町、与那国町)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。