沖縄戦で戦死した兄の遺骨を長年捜している北海道千歳市遺族会の渡辺鶴雄さん(79)がこのほど、米国で見つかった兄の名前が入った寄せ書きの日の丸を持ち、那覇市首里の静魂之塔で手を合わせた。渡辺さんは「兄が亡くなった首里で両親に報告でき、気持ちが落ち着いた面もあるが、まだ心残りがある。遺骨が見つかるまで沖縄に通いたい」と話した。
国旗は米国の空き家で数年前に見つかり、遺品返還ボランティア団体を通してことし10月に渡辺さんに届いた。沖縄からいつどのように米国に持ち出されたのか、分かっていない。
渡辺さんは静魂之塔に兄の遺影を立て掛け、日の丸を広げて線香を上げた。「激戦の中、よくきれいな状態で残っていた。これを兄貴が持っていたと思うと何とも言えない」と語った。
兄の義雄さんは陸軍第24師団歩兵第22連隊として沖縄戦に出征し、1945年5月20日に静魂之塔周辺で戦死した。遺族にはサンゴのかけらが届けられた。
遺骨収集のため毎年のように沖縄に通ってきた渡辺さんは昨年3月、静魂之塔の近くで日本兵とみられる遺骨を掘り出したが、誰の骨かは分かっていない。
渡辺さんは安保法が成立した現在の状況を「日本は70年前の道を歩もうとしているかのようだ。あの苦労をこれからの子どもたちに味わわせてはいけない。北海道からも訴え続けたい」と話した。