「福祉施策の充実を」 県児相元所長山内氏講演


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 戦後70年の節目に生活保護など公的扶助について考える、第48回「公的扶助研究全国セミナー・沖縄大会」(主催・全国公的扶助研究会、同実行委員会)が27日、宜野湾市民会館で行われた。29日まで。初日は沖縄大学非常勤講師で、元県中央児童相談所所長の山内優子氏が記念講演した。山内氏は、沖縄の子どもの貧困状況を説明し、「沖縄ではすでに貧困の再生産が起きている。再生産を止めるには、児童福祉行政と公的扶助の充実が必要だ」と訴えた。

 山内氏は「沖縄で考える子どもの貧困と未来」と題して、沖縄の戦後70年を児童福祉の観点から振り返った。沖縄戦により多くの戦災孤児が出現し、戦後も米国統治下で軍事施策が優先され、母子寮や児童館などの整備が進まなかったことを説明した。さらに「復帰後の経済振興も道路やダムなどの建設に充て、地元に還元せずに貧困は解消されなかった」と話した。
 全国に比べて、待機児童が多く、学童保育の利用料が高く、児童館が少ない―など、今も続く児童福祉行政の格差を指摘した。その上で、貧困からネグレクト状態になり、学校の学習についていけず、ニートや少年非行が増加するという、沖縄の子どもの貧困の連鎖を説明した。
 大会は「戦後70年 今問われる 貧困・格差・不平等~沖縄で考える『命・くらし・平和』」のテーマで、全国の社会福祉司や研究者ら約450人が参加した。

第48回公的扶助研究全国セミナー・沖縄大会の参加者ら=27日、宜野湾市民会館
    山内優子氏