【南城・八重瀬】「アトミック先生、いつまでもお元気で」-。約55年前、南城市立(当時佐敷村立)佐敷中学校で教員を務めていた中村武雄さん(80)とその教え子らが、中村さんのあだ名「アトミック」を冠した同期会「アトミック会」を定期的に開いている。19日、八重瀬町伊覇の中村さん宅の新築祝いに教え子約30人が駆け付け、半世紀がたっても変わらない教師と生徒の親睦を深めた。
中村さんの当時の様子を「とにかく厳しい先生だった」と異口同音に振り返る教え子たち。「アトミック」の由来は、当時人気を博した覆面レスラーのミスター・アトミックだ。
中村さんが定年した後の約15年前、担任を受け持っていた3年A組の16期生を中心に会を結成。偶数月に集まりを持ち、昨年12月には修学旅行で行った嘉津宇岳を再訪した。
ある日のA組での出来事。生徒たちが教卓の縁にチョークを塗り、中村さんのスーツを汚すいたずらをした。烈火のごとく怒る中村さんが誰の仕業かを追及する中、嘉数勝一さん(67)は自分はやっていないのに名乗り出た。「こっぴどく怒られたが、(やったのではないと分かっていたので)後でこっそり参考書をくれた。怖いが、情のある先生だった」と懐かしむ。
一番のウーマクーだったという島田章さん(67)は「『生徒のことを思ってきつくしかってくれていたんだ』と、大人になって気付いた」と笑う。「いわゆる『暴力』ではなく、先生の思いを生徒も分かっていた」と真栄城守克さん(67)もうなずく。
中村さんは南風原町出身。琉球大学を卒業後、技術家庭科の教員として伊是名中を経て佐敷中に赴任した。「技術の授業では機械を扱う。『絶対に生徒にけがをさせてはいけない』という思いから厳しく指導した」と当時を振り返る。
会長の知念幸則さん(67)は「先生には人を引き付ける魅力がある。体が元気なうちは集まりを続けたい」と意気込む。中村さんも「会の案内が来るのがいつも待ち遠しく、若返る気持ち。ずっと会が続いてほしい」と笑顔を見せた。(内間安希)