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控訴棄却も、遺骨は「ふるさとに帰すべき」と付言 琉球遺骨返還請求訴訟で大阪高裁 原告を「琉球民族」と認定


控訴棄却も、遺骨は「ふるさとに帰すべき」と付言 琉球遺骨返還請求訴訟で大阪高裁 原告を「琉球民族」と認定 大阪高裁の控訴審判決を前に、庁舎へ向かう琉球遺骨返還請求訴訟の原告ら=22日午後2時すぎ、大阪市内
この記事を書いた人 琉球新報社

 琉球王家の子孫という県民らが、昭和初期に旧京都帝国大(京都大)の研究者によって今帰仁村の風葬墓「百按司(むむじゃな)墓」から研究目的で持ち去られた遺骨の返還などを大学に求めた琉球遺骨返還請求訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(大島真一裁判長)は22日、請求を退けた一審京都地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。一方、付言で遺骨の返還は世界の潮流になりつつあるとし、「持ち出された先住民の遺骨は、ふるさとに帰すべき」と指摘。訴訟では問題解決に限界があるとし、関係者による話し合いを促した。

 原告側は上告する方針。研究目的で持ち出された遺骨の返還訴訟で高裁判断が出たのは初めて。

 大島裁判長は認定事実で、原告らについて「沖縄地方の先住民族である琉球民族に属する」と言及した。判決理由では、国際人権法や憲法に基づく遺骨返還請求権はないと判示。墓への参拝を行っている子孫らは他にも多数存在すると考えられ、民法で請求権がある祭祀の主宰者とは認められないとした。京都大による遺骨の保管態様は「不当なものとはいえない」と述べた。

 判決を受け、原告側の丹羽雅雄弁護士は「法の論理として一審判決の枠を超えられなかったが、琉球民族と認定したことに驚いた。付言に裁判長の思いがこもっている」と評価した。京都大は取材に「主張が認められたものと理解している」とコメントした。