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琉球遺骨返還訴訟、大阪高裁判決が確定 原告団、「ふるさとに帰すべきだ」「琉球民族」などの言及を評価


琉球遺骨返還訴訟、大阪高裁判決が確定 原告団、「ふるさとに帰すべきだ」「琉球民族」などの言及を評価 大阪高裁が入る庁舎=9月22日、大阪市内
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 琉球王家の子孫という県民らが、昭和初期に旧京都帝国大(京都大)の研究者により今帰仁村の風葬墓「百按司(むむじゃな)墓」から研究目的で持ち去られた遺骨の返還などを大学に求めた琉球遺骨返還請求訴訟で、原告側の控訴を棄却した大阪高裁判決が10日までに確定した。6日の上告期限までに原告側、被告側が上告しなかった。原告団、弁護団は10日、付言(ふげん)で「持ち出された先住民の遺骨は、ふるさとに帰すべきだ」などと言及した高裁判決を評価し、「積極的に上告しない」とする談話・声明を発表した。

 原告団は松島泰勝団長=龍谷大教授=名の談話で、高裁判決が「沖縄地方の先住民族である琉球民族に属する控訴人ら」「昭和初期の沖縄が大日本帝国による植民地支配を受けていたと評価できるとしても」などと触れたことを重要視。「歴史的な事実認定が行われ、われわれの主張が認められた」と強調した。

 また判決を書いて退官した大島真一裁判長による原告側に寄り添うような訴訟指揮に感謝した。上告すると「政治的な介入が予想され、歴史的な文言も消される」と危惧。高裁判決の確定で「琉球民族による自己決定権運動を拡大させる法的基盤になった」と訴えた。

 弁護団は丹羽(にわ)雅雄団長名の声明で、請求を退けた一審京都地裁判決を支持し、控訴を棄却した高裁判決を「大変残念」とした。一方、遺骨が地元へ帰る権利に触れた付言などから「琉球民族に対する愛情と理解を行間に読み取れる」と評価。関係者による協議を促した点も「一定の方向付けが示されている」と受け止めた。

 京都大は取材に「(判決確定の)詳細が確認できておらず、コメントできない」としている。