【震災5年】観光地の防災に警鐘 琉大留学経験デビッドさん


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沖縄観光コンベンションビューローの防災パンフレットを手に、観光地の防災対策を説くヌイン・デビッドさん=2月24日、宮城県仙台市

 土地勘のない訪問者が多い観光地での防災をどうするか―。東北大学大学院工学部研究科の津波研究室に所属し、各国と連携する研究機関「東北大学災害科学国際研究所」のヌイン・デビッドさん(35)=米国ハワイ州カイルア市出身=が津波の襲来が多いハワイ、東日本大震災時の宮城県、沖縄県などを例に観光の観点から考える防災について研究を進めている。国内と海外各地の避難誘導対策、観光客への周知方法を比較しながら「震災後、沖縄は行政の防災意識は高まっているが、一般人の意識が低い」とし、観光地としての在り方に警鐘を鳴らしている。

 ハワイ大学学部時代から都市計画の観点で防災を研究してきたデビッドさんは、2008年と11年の2度、琉球大学に留学し、観光業で働いた。「沖縄近辺には二つの火山があり、宮古、八重山を中心に津波のリスクもある。スーパー台風と呼ばれる巨大な台風には現在の沖縄の建造物は耐えられない可能性もある」と指摘する。「観光は安全を売りにしなければならないが、自然災害のリスクにも備えて、観光客に周知しなければならない。逆説的な課題がある」と説明する。
 防災は防潮堤などのハード面と避難計画や訓練などソフト面に分けられるが「海を観光資源とする沖縄は防潮堤などは造れず、ソフト面の防災計画に力を入れる必要がある」と話す。防潮堤など建造物をいったん造ると“建物頼み”になり、人々の危機意識が薄れるというデメリットもある。
 日本三景の一つ、宮城県松島町。東日本大震災では沿岸の島々が防潮堤代わりになったが、津波の浸水で死者が出た。震災後に調査すると、町は震災後にホテル協会が策定した防災計画や観光協会の避難マニュアルを把握しておらず、連携不足が明らかになったという。
 沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)などの取り組みも調査しているデビッドさん。最近、OCVBが発行した多言語別の防災パンフレットの取り組みなどを評価しつつも「作成したものが観光客の手元に届くことが大事だ」と語る。観光に関わる各方面が連携し「観光客をどう避難させるか、普段からホテル従業員や観光従事者の防災訓練が必要」とも指摘し、観光立県沖縄の取り組みの強化を期待した。(東江亜季子)