県春季高校野球 ベスト4決定


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 第63回県高校野球春季大会第9日は30日、北谷公園野球場などで準々決勝4試合を行い、美来工科が初、糸満が2年ぶり、豊見城と沖縄尚学が2年連続のベスト4進出を決めた。美来工科は同点の八回に勝ち越すと、九回に追加点を奪って3―1で前原を退けた。糸満は序盤でリードを奪うと、五回以降に毎回加点して9―2で沖縄水産を破った。豊見城は1点を追う四回に逆転すると、六回に2点を加えて7―2で第4シードの嘉手納を振り切った。沖尚は投打で宜野湾を圧倒し、9―0の七回コールドで勝利した。準決勝は1日に北谷公園野球場で行われる。

沖尚―宜野湾 4回沖尚無死一、三塁、右前へ適時打を放つ多和田優亜=30日、北谷公園野球場(普久原裕南撮影)

◆沖尚、3戦コールド 下位打線エース援護
 沖縄尚学が3試合連続のコールド勝ちで4強へ駒を進めた。11安打で9点を奪えばエース諸見里俊は二回を除き、二塁すら踏ませない。チーム力で夏のシード権を獲得。大きなハードルを越え、ナインには安堵(あんど)の表情が並んだ。
 二回、相手失策と9番多和田優亜の三塁打で2点を先制。四、五回も下位打線の逆方向を意識したシャープな打撃で得点を重ねた。一塁から積極的に生還を狙う走塁も相手へ重圧を与えた。味方の援護を背に、エース諸見里は初回からほぼ直球で押し続け、散発3安打。先頭打者を出さない「先頭必殺」(諸見里)の意識でテンポ良く封じた。
 昨年夏の新人中央大会、秋季大会はいずれも初戦で敗退。特に秋は攻守とも見せ場なく五回コールド負けを喫した。この日2安打3打点と活躍した多和田は「一つになろうと練習から高い意識を持ってやってきた」と言う。ひと冬を経て、地に足の着いた野球ができるようになってきた。
 諸見里は「相手のミスで点が入り、コールドでも他力なところがある。4強という実力勝負の場で力を出す」と気を引き締める。指揮官が「上位につながりがなかった。打線としてつながるのが理想」と注文を忘れなかったのも、期待の裏返しだろう。夏を見据えた今大会、確かな成長曲線を描きたい。(大城周子)

前原―美来工科 9回美来工科1死二塁、山内慧の左前打で本塁に滑り込む二走の山里太壱=30日、北谷公園野球場(普久原裕南撮影)

◆美来工科、歴史開く 身上の粘り強さ発揮
 九回1死満塁。サヨナラのピンチを併殺で切り抜けた瞬間、マウンドでは仲宗根登夢がぐっと拳を握り、ベンチからは選手たちがはじき出されるように飛び出してきた。3回戦に続いて最終盤の猛追を振り切っての勝利。美来工科が接戦の強さを発揮し、初めて4強の扉をこじ開けた。
 両チームとも相手投手を攻略しきれずじりじりとした展開が続いた。眞玉橋元博監督が試合の「潮目」に挙げたのは、八回2死三塁での砂川魁の打撃だ。追い込まれながらもファウルで粘り、バットを伸ばして当てた9球目は野手の間に落ちる勝ち越し打に。砂川は「どんな形でもいいからかえそうと思った」。執念の一打で士気の高まった打線は九回にも3安打を絡めて加点。エース仲宗根は「砂川が泥くさく取ってくれた1点。絶対に取られたくなかった」と意地で締めた。
 3月の対外試合解禁以降、県内外の強豪との練習試合を負けなしでこなし、勢いそのままに今大会を勝ち上がっている。2回戦から1点差、1点差、2点差の勝負を制し、眞玉橋監督は「ミスしてもずるずるいかない。たくましくなった」とうなずく。主将の目取真慶樹も「ピンチでも動じず守れているし、いつも通りのプレーが意識できている」と自信の表情だ。上げ潮に乗り、春の主役を目指す。(大城周子)

◇きのうの結果
▽準々決勝
美来工科 3―1 前原
豊見城 7―2 嘉手納
糸満 9―2 沖水
沖尚 9―0 宜野湾
(七回コールド)

◇あすの試合
▽準決勝
【北谷】9時
美来工科―豊見城
糸満―沖尚