ブラックバイト 企業と学生「共依存」


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 学生へのアンケートを通して、学業に支障を来す「ブラックバイト」の深刻さを調査する琉球大学法文学部社会学専攻の野入直美准教授は、企業で学生アルバイトの「主戦力化」が進行する実態に危機感を示す。その上で、アルバイト経験が就職に生かされるような「学生を育てる視点」を持った働かせ方を、大学と企業が協働でつくる必要性を指摘する。

 講義や調査を通して、野入准教授は、過酷な労働そのものよりも、過酷さを自覚していない学生の現状を危ぶむ。「バイトは一過性のものだという意識があるが、バイトはキャリアの出発点であり、就職と地続きの問題だ。過酷な働き方に真面目に適応した学生は将来、ごく自然に周囲や部下に同様の働き方を強いることになる」と指摘。「ブラックバイト」を放置することは、過酷な就労文化の再生産につながると危機感を強める。
 「ブラックバイト」の背景には、正規社員を減らして、学生アルバイトに依存する企業側の就労構造があると指摘する。その一方で、学費や生活費の負担が困難な家庭が増え、大学の学費は上がり続けているとし「学生も働かなくては学生生活を送れない切実さがあり、企業と若者とが共に依存し合っている実態がある」と考察する。
 学生を支える仕組みも十分ではなく、奨学金は実質的な教育ローンとなっている。同大で奨学金を借りる学部学生の割合は5割を超えるが、「現状を放置すれば、将来的に日本の製品の質とサービスは劣化する。若者を使いつぶす社会は未来をつぶす社会だ。大学側も実態を共有して企業にメッセージを送る必要がある」と警鐘を鳴らす。
 その上で「例えば、試験前に学生がシフトに入らずに済むルールを大学と企業側で共に考えられないか。学生がキャリアの一環としてバイト現場から学べる働き方を、企業と大学側が協働してつくることも必要だ」と提起する。
 5月には、さらに120人の受講生に調査対象を広げる。野入准教授は「大学を挙げた対策につなげるために、パイロット調査と位置付けられるようなデータを集めたい」と語った。
(新垣梨沙)