素朴な味わいに「幸」込め 琉球玩具製作者の中村真理子さん


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「多くの人に琉球玩具を見てほしい」と語る中村真理子さん=22日、那覇市壺屋の「琉球玩具製作所こくら」

 馬に乗る国王の姿を模した「チンチン馬」や頭が揺れる「闘鶏(タウチー)」など紙を使った張り子や木、粘土で作られる琉球玩具。その伝統的な作風を継承し、製作活動を続けているのが「琉球玩具製作所こくら」の中村真理子さん(53)=那覇市=だ。「沖縄の風土に根差した素朴な玩具だが県外の愛好家も多い。地道に作っていきたい」と語る。自宅内の作業場で、子の成長や家族の健康を願う伝統の玩具を作り続けている。

 県内では玩具を「イーリムン」と言い、旧暦5月4日の「ユッカヌヒー」には親が子の成長を願って玩具を買い与える風習があった。大正末期ごろはブリキなどの玩具が登場し、姿を消していった琉球玩具だが、戦後になって復元に努めたのが中村さんの祖父・古倉保文(やすふみ)さん(故人)だった。
 県内唯一の本式の作り手として、那覇市の無形文化財保持者にも指定された古倉さんの製作活動を「小さな頃から興味を持って見ていた」という中村さん。高校生の時には下塗りの作業などを手伝うようになり、2000年に古倉さんが95歳で死去した後、製作所の看板を引き継いだ。
 20種類ほどの玩具を手掛けるが、特に張り子は首や羽根などが動く仕掛けもあるため工程も多く、完成までに時間がかかる。「祖父から作り方を習っていない玩具もあり、試行錯誤でやってきた」と振り返りつつ「作っているとあっという間に時間が過ぎる。製作は楽しい」と笑う。
 「心を込めて作った作品をお客さんに喜んでもらうことが、何よりもうれしい」。製作途中の部品を並べる板や工具など、偉大な祖父が愛用した道具を使いながら、きょうも色彩豊かな玩具たちに命を吹き込んでいく。