「殴らなくても人を傷つけることも…」 元DV加害者語る


この記事を書いた人 志良堂 仁

 DV加害者の更生事業などに取り組む更生保護法人がじゅまる沖縄が主催する「DV防止について考える講座」が4月28日、那覇市の県総合福祉センターであり、薬物依存とDV加害経験の男性(38)が体験を語った。男性はDV防止講座の受講を機に「殴らなくても人を傷つけることがあると知った」と家族や友人を傷つけた過去を振り返り、生き方を変えようと努力する決意を語った。

 今回の講座は、自分を変えようと努力するDV加害や薬物依存の経験者らの体験談を通して、暴力のない人間関係の大切さを訴えようと実施した。昼夜の2回で計約110人が受講し、男性の話に耳を傾けた。
 京都府出身の男性は、親の関心を引こうと小学校高学年から喫煙や飲酒、バイクの暴走行為を繰り返し、中2の頃、覚醒剤に手を出した。2度の少年院送致の後も薬物を絶てず刑務所へ。暴力団に入ると再び薬物に手を染め、服役と出所を繰り返した。
 妻や子どもと別れ、暴力団からも破門されると、より一層薬物漬けの生活を送るように。父親のはめていた腕時計を奪い、妹の子どもの財布からお金を抜き取って薬物を買ったこともあった。
 3年前、薬物依存リハビリ施設「沖縄ダルク」に入所し、治療の一環で受講したDVについての講座を受けたことが転機になった。被害経験者の話を聞くうち、これまで自分が家族や友人に取ってきた威圧的な態度や相手を追い詰めるやり方は、DVだったと気付いた。「殴らなくても人を傷つけることがあると知り、二度と人を傷つけてはいけないと感じるようになった」と心境を語った。
 人の痛みを知ってからは、生きている間に人の役に立つ人生にしたいと考えるようになった。
 「後から来る若い人たちに背中を見せたい。仲間の希望になれれば」と奮起し、36歳で通信制の高校に入学した。
 がじゅまる沖縄研究員の名嘉ちえりさんは「彼は、暴言や威圧的な態度を取っていたこれまでの自分を見つめ直し、相手のことを考えなければ人間関係はよくならないと学んだ。人は自分が変わりたいと思えば、変われること、前に進めるということを知ってほしい」と話した。