官邸主導に不信も USJ沖縄進出撤回


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<解説>
 本島北部へのテーマパーク建設計画を進めてきた米映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ、大阪市)は、運営会社が沖縄進出を撤回することを県や政府に伝え、政財界や地域を巻き込んだ誘致劇は幕を下ろすこととなった。沖縄観光のレベルを上げる起爆剤として国内第2のテーマパークの行方に内外から高い関心を集めた一方、事業採算性や誘致の進め方に懐疑的な見方もあり、観光業界には「今後への影響は限定的だ」との声が上がる。

 USJ進出への期待は大きかったが、島嶼(とうしょ)県の限られた市場規模での集客や本島北部の交通インフラ環境など、実現に向けては克服すべき条件が多かった。このためUSJ側は、県内随一の人気を誇る美ら海水族館の集客力を生かした国営海洋博公園の使用、沖縄自動車道許田インター以北の道路網など、財政的な支援を水面下で行政に働き掛けてきた。
 さらに昨年11月、USJの運営会社ユー・エス・ジェイの最大株主が米メディア大手コムキャストになったことを機に、新たなテーマパークの建設計画はUSJ内部でもゼロベースで再検証されることとなった。計画の立案と行政との交渉を重ねてきた従来の執行陣に対し、沖縄進出の投資効果に疑問を抱く新たな親会社との間で議論になり、行政側の支援姿勢を見極める作業も続いたとみられる。最終的には、好調な推移を見せる大阪の既存パークに経営資源を集中する判断となった。
 一方、これまで県や政府も国家戦略特区の適用などUSJ誘致に前のめりの姿勢を見せてきたものの、「一企業のための優遇は市場の自由競争論理とずれている」(平良朝敬沖縄観光コンベンションビューロー会長)など県内には批判もくすぶった。官邸主導の政治色が強くにじむほど、県民の中に「辺野古移設とのリンク」という警戒感を高めることとなり、賛否が交錯する複雑な地元感情を生むこととなった。
(与那嶺松一郎)