原発、弱者排除、報道の自由… 木村教授、山口氏 日本の現状に危機感


社会
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フェリス女学院大学の生徒の依頼で1993年に手掛けた絵本「さだ子と千羽づる」を手に、現状の危機を語る山口泉さん(右)=4日、沖縄市安慶田のくすぬち平和文化館

 【沖縄】沖縄市安慶田のくすぬち平和文化館で4日、木村朗鹿児島大教授と作家の山口泉氏のトークセッションが開かれた。「行動する平和学者」と「抵抗する作家」の、静かだが熱を帯びた語りが、観客を深い思考の世界へといざなった。

 木村教授は「唯一の被爆国の日本がなぜ、米、仏に次ぐ世界3番目の原発大国になったのか。東京電力福島第1原発事故を経て、原発を再稼働し、輸出をするに至ったのか、日本人は真剣に考えないといけない」と指摘。「資本主義が行き詰まる中、戦争や災害などの危機で、強い者だけが生き延びる方向に日本も走りつつある。そうならないようにと、最前線での闘いをやっているのが沖縄だ」として、沖縄を中心に中国、韓国、台湾の東アジア共同体で連帯する重要性を説いた。
 山口氏は「震災以前は、地面に埋める核廃棄物の放射線量の基準が100ベクレル/キログラムだったが、今は食品の“暫定基準値”になっている。見えない“階級”が固定されていく中で、命が助かる人とそうでない人がはっきりしてきている」と話し、「“絆”というファシズムが機能しつつある。異常な状態だ」と指摘した。
 トークセッションでは、1月施行の「がん登録推進法」により、医療関係者が被爆とがんの関係を検証・公表できない土壌がつくられつつあることや、日本の報道の自由が、後退していることを深刻に受け止めるべきだとの指摘がなされた。