政治

容疑者“民間人”を強調 米政府、事態の収拾急ぐ

米軍属女性死体遺棄事件を受け安慶田光男副知事、とローレンス・ニコルソン在沖米四軍調整官が面談=5月20日午後、県庁6階

 「米軍人でも国防総省の軍属でもなかった。米軍施設にサービスを提供する会社で働いていた人物で、地位協定上の地位の資格を与えられるべきではなかった」「繰り返すが、民間契約業者で地位協定上の地位を持つべき人物ではない」
 米国防総省の報道室。米国内外の記者が詰め掛ける中、デービス報道部長(海軍大佐)は淡々とした表情で、米軍属女性死体遺棄事件で逮捕された容疑者の「身分」について繰り返し強調した。

■容疑者の「身分」
 「米軍や米政府が雇用しているわけではない」。在沖米軍トップのニコルソン在沖米四軍調整官が安慶田光男副知事と面談で、容疑者の「身分」について重ねて言及したのを皮切りに、国防総省のクック報道官も会見で「契約業者であり、軍属ではない」と指摘。国防総省は容疑者と米軍との関わりの薄さを強調する。
 カーター米国防長官も中谷元・防衛相との電話会談で、「日本の法体系で対処されることを望む」と伝達。米側はこれまで米軍人・軍属による事件が起こる度に、可視化や弁護人の立ち会いがない日本の司法手続きの不備を主張し、日米地位協定を盾に身柄の引き渡しなどを拒否してきた。だが、今回は早々と日本の司法下での対処を長官自らが求める異例の対応を見せる。さらにデービス氏は容疑者について「地位協定上の地位を与えられるべきではなかった」と踏み込んだ。
 日米関係筋は「(容疑者が)地位協定上の地位でなければ軍関係者が起こした事件ではなく、ただの米国市民による犯罪になり沖縄が主張する『事件は基地があるから起きた』という論理は通らなくなる。さらに米政府は事件の影響が全国へ広がるのも懸念している」と解説。容疑者を“民間人”とすることで、事件の沈静化を図る狙いがある。

■改定は否定
 米政府は翁長雄志知事が求める地位協定の改定には否定的だ。アーミテージ元国務副長官が本紙インタビューで協定改定を「世界的に影響がある」と語ったように、1960年の発効以来、一度も改定されず運用改善で対応してきた。デービス氏は「全ての事例で地位協定の改定でなく、むしろ運用(改善)で処理してきた」と強調する。米政府関係者は「今回は地位協定が関わる事案ではない」と翁長知事をけん制した。

■募る危機感
 米政府は事件を受け、「恐ろしい悲劇であり非道な行為だ」(アーネスト大統領報道官)と容疑者を厳しく非難し、県警の捜査への全面協力を表明する。オバマ大統領の訪日が迫り、事件の影響を最小限に抑え、「辺野古移設堅持」の強い姿勢を示すことで、事件が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設問題まで及ぶことを避けたい狙いがある。日米関係筋は「翁長知事は事件を辺野古移設阻止の運動につなげようとしている。この事件を政治問題化させてはいけない」と強調する。
 だが、県内で事件への反発が広がる中、事態の収拾を急ぐ米政府が沖縄の現状から目をそらし、その場しのぎの対応や責任回避の姿勢に終始すれば、沖縄との溝がさらに広がることは避けられない。
 (問山栄恵ワシントン特派員)



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