社会

オバマ氏訪問「選挙対策」 広島市民に冷めた目

原爆ドーム前で「オバマは帰れ」と拳を突き上げる学生や市民団体らのデモ=26日、広島市

 【広島で宮城隆尋】「岸田さんも地元で大手柄じゃけえ、今度の選挙は大勝するじゃろ」。広島市の繁華街にある料理店で、店主が冷めた口ぶりで言った。オバマ米大統領の訪問を報じる新聞を見ながら、昼食をとる常連客は「内閣支持率もうなぎ上りになるんじゃないか」とあきれるように応えた。

 27日、オバマ氏が平和記念公園を離れた直後に開いた会見で、地元選出の岸田文雄外相は「これを(核兵器廃絶への)スタートにしたい」と成果を強調。一方で大統領から原爆投下の是非に関する言及もなく、謝罪がなかったことへの見解は述べなかった。
 オバマ氏が2009年にチェコ・プラハで「核兵器なき世界」と題して演説して以降、広島では被爆者たちを中心に同氏の訪問を求める運動が広がった。今回の訪問を「念願がかなった」と歓迎する一方、一部にはオバマ氏の退任直前、参院選直前の訪問に「成果づくり」「選挙対策」との冷めた見方もある。
 「安倍さんとオバマさんの仲良しごっこじゃ意味がない」。タクシー運転手の女性(61)=広島市=は日米両政府を批判。沖縄での米軍属女性遺棄事件にも触れ「事件ばかり起こす海兵隊が一番の問題だ。街にも米兵が出てきて、時々事件も起こしている。米軍には日本から出て行ってもらうしかない」と話す。
 広島県では中国山地を横断する「ブラウンルート」など米軍の訓練空域が設定されているが、区域外の広島市上空でも米軍機の低空飛行がたびたび目撃されている。被爆者の吉岡幸雄さん(86)=広島市=は「米軍の存在が日本全国を危険に陥れている。戦後70年以上も他国の軍隊が駐留し続けているのは異常だ」と語る。米軍基地被害の対策や、日米地位協定改定に後ろ向きな日本政府に問題があると指摘。
 「憲法9条をないがしろにする安倍政権の下では、日本は再び戦争を引き起こしかねない。被爆者の思いを受け止めてほしいのは、むしろ今の日本政府だ」と強調した。