有料

子どもへの性暴力、「何があっても悪いのは加害者」 嫌なことへの意思表示、支えを 被害者取材の経験共有 朝日新聞編集委員・大久保さん 沖縄


社会
子どもへの性暴力、「何があっても悪いのは加害者」 嫌なことへの意思表示、支えを 被害者取材の経験共有 朝日新聞編集委員・大久保さん 沖縄 「性的同意のない性行為は性暴力だと、社会の隅々まで共有していかなければならない」と語る朝日新聞編集委員の大久保真紀さん=2月20日、那覇市
この記事を書いた人 Avatar photo 吉田 早希

 性暴力の被害者支援を行う関係機関従事者ら向けの研修(沖縄県主催)がこのほど、那覇市の八汐荘で開かれ、およそ80人が参加した。朝日新聞編集委員の大久保真紀さんが「子どもへの性暴力」をテーマに講演し、社会で起きている性暴力の実態や被害者取材の経験などを共有した。

 研修は、被害者の心情や適切な対応などに関して理解を深め、被害者が安心して相談できる支援体制の構築を目的に開催された。

 冒頭で大久保さんは、16~24歳の若年層を対象にした内閣府のオンラインアンケートで、4人に1人が何らかの性暴力被害に遭ったことがあるという結果を報告。その一方で、2020年度の内閣府調査では、性交被害を誰にも相談しなかった人の割合は女性58.4%、男性70.6%に上った。「恥ずかしくて誰にも言えなかった」「相談しても無駄だと思った」など、多くの被害者が被害を相談できていない実態を説明した。

 「こういう実情を少しでも変えたい」と2019年12月から「子どもへの性暴力」シリーズを連載し、大久保さんは取材班キャップを務めている。第1部は被害当事者が顔と名前を出して体験やその後の人生を語ったシリーズで、社内外から大きな反響が寄せられた。

 「どういう考えで加害するのかを、加害者臨床をする側は知っていく必要がある」と考え、加害者への直接取材を通して最新第9部をまとめている。「加害を減らし再犯を防止しないと、被害は増える一方だ」と語った。そして取材した被害者の心境や生活の変化、その後の人生などについて伝えた。

 性暴力の被害は癒えない心の傷、トラウマ(心的外傷)として残る。また被害者は「自分が悪かった」「自分が夜道を1人で歩いていた」など強い自責の念を持ち、助けを求めにくい状況に追い込まれてしまう。大久保さんは「私たちが共通して持つべきなのは、何があっても悪いのは加害者だという認識。被害に遭った人に『あなたがそうしてたから』と言うのは、被害者を傷つける以外の何ものでもない」と訴えた。

 自己破壊的な言動や過度な警戒心、集中困難など、被害者はさまざまな場面で自分をコントロールしにくくなると指摘。「勉強ができなくなり、友人関係も厳しくなるなど、問題のある子どもに見えてしまう。問題があるのではなく、問題を抱えて困っている子なんだ、と思う必要がある」と語った。また、男性の性被害は女性以上に相談しにくく、からかいの対象になりがちで、被害が認識されにくいことも説明した。

 大久保さんは「相談してくれたことに感謝を示し、被害者の気持ちを受け止めることが大切だ」と強調。最後に「子どもたちが普段の生活から嫌なことにNOと言えないならば、性暴力にNOと言うことなどできない」と、日常生活から子どもの意思表示を支える必要性を訴えた。

(吉田早希)