識者に聞く・争点と意義(1) 宮田裕氏


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生命的ビジョン語ろう

 これまでの選挙は基地問題が最優先課題となって争点に上がり、経済や弱者対策が弱かった。今、政治に問われているのは「子どもの貧困」問題だ。復帰して44年が経過し、社会インフラは本土並みに整備されているが、教育や福祉分野は立ち遅れている。

 就業者の約45%は非正規雇用で、そのほとんどが年収150万円前後で暮らしている。低収入、格差社会、貧困の三つは沖縄の社会現象だ。経済的困窮が子どもの教育と将来に影響している。貧困社会の現実に政治は光を当てるべきだ。県議選で立候補者はしっかりした座標軸を持って弱者に向き合ってほしい。

 復帰して本年度までの沖縄振興事業費の予算総額は10兆6889億円で、社会資本整備は進んでいる。経済規模は復帰時の4592億円から約8・3倍の3兆8066億円に拡大した。

 しかしコンクリート中心型の財政投資で経済自立には結び付いていない。国の直轄事業を見ると、ほとんど本土還流型の振興策だった。そういう形でザル経済がつくられ、税収にほとんど結び付いていない側面がある。

 県財政の14年度の歳入総額に占める地方税収入の割合は15・1%で全国平均の26・8%より極端に低い。地方交付税の比率は28・4%で全国の23・3%より高い。国庫支出金は32・9%で全国の13・4%より高く、沖縄予算優遇論という議論が出てきてしまっている。

 基地とリンクした振興策の問題も見逃せない。島田懇談会事業で888億円、北部振興事業で1100億円の国庫が投入された。そういう形で2千億円近い金が投入されたが、ハコモノが造られ維持管理コストの負担で市町村財政が硬直している。雇用機会創出や経済自立、人づくりを目指す事業目的はほとんど達成されていない。

 政治家は経済問題を政治で語ってはいけない。経済問題は陳情・要請の解決型となってしまっている。沖縄振興の生命的なビジョンを語るべきであり、国の政策を傍観するだけでなく、沖縄の将来や経済社会を分析し、果たすべき役割を自覚して取り組んでほしい。
(沖大、沖国大特別研究員 地域開発論)