識者に聞く・争点と意義(2) 西本裕輝氏


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教育環境整備の予算を

 学力問題については、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で2014年度に小学校が算数Aで全国6位になるなど沖縄は上がっている。中学校は(改善傾向にあるが)最下位から抜け出せないままだ。小学校は補習などで何とか改善したものの、中学校はドリル対策では簡単に上がらない。

 しっかりとした生活習慣が身に着いている子どもほど学力は高い傾向にある。しかし、14年度に学力テストの順位が上がった時でさえ、子どもの睡眠時間(全国43位)や親子間の会話(同47位)など、子どもを取り巻く家庭状況は悪いままだった。

 学校の先生の努力だけでどうにか学力が上がっているという現状だ。家庭のバックアップも重要だ。

 社会全体での支援も必要だ。夜遅くに子連れで外食することを制限するような条例の制定も必要なのではないか。店によっては自分たちで子連れ客の時間制限を設けている所もある。また、県が家庭教育支援に取り組む「『家~なれ~』運動」や、県の委託で県医師会が小学校高学年向けに編集した生活習慣の副読本制作といった動きもある。

 一方で、このような独自の取り組みや個人の良心に頼るのではなく、具体的な取り決めがあってもいいかと思う。大人の意識を変えることが社会全体で子どもたちを守っていくという雰囲気の醸成につながる。

 教育機会の均等も大切な争点だ。教育環境の整備にももっとお金を回してほしい。公立小中学校では地区によって、いまだに冷房がない教室がたくさんある。特別支援教育のヘルパー配置も学校によって大きく隔たりがあるという。

 幼児教育の重要性にも目を向ける必要がある。米軍統治下に保育所より幼稚園整備が先行した沖縄では、公立幼稚園に通う子どもたちの行き場が午後からなくなる「5歳児問題」がある。県外には見られない問題だ。結果としていわゆる「鍵っ子」が増える。5歳にして放任してしまうことになり、虐待とも言える。幼児期の重要な時期に教育の空白期間ができてしまっている。認定こども園の整備が進めば、この問題を解決することができるだろう。

 「子どもたちあっての未来」ということにより目を向けて、社会のルール作りをしていける議員が増えていけば望ましいと考えている。
(琉球大大学教育センター准教授 教育社会学)