祈りの場、復活へ 「アラガクル」山道整備、願い実現


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アラガクル(新川香炉)で整備作業を行う田島政之さん(右)ら=与那国町

 【与那国】与那国町在住の田島政之さん(43)と、町文化財担当者はこのほど、「アラガクル(新川香炉)」周辺の整備作業を行った。

 アラガクルは本来、旧暦6月に行われる1年間の締めくくりの祭事であるウガンフトゥティ(豊年祭)が終わった後、新年度最初の行事として旧暦8月に行われるアラガトゥタガビでの巡礼地の一つ。

 しかし、旧暦8月中に島に死者が出ると、アラガクルでの祈願は中止されたことや、人々の暮らしぶりが移り変わったことなどから、いつの頃からかアラガクルに足を運ぶ人々は絶えていた。場所を知る人も少なく、南海岸の断崖に近い森林の中にあるため、植物の成長に伴い道がふさがれ、訪れようとしても、たどり着くのが困難な状況になっていた。

 「以前に高齢者対象のデイサービス事業に携わる仕事をしていた際に、半世紀ほどアラガクルに行っていない、生きている間に訪れたいと語る高齢者たちの言葉がずっと心に引っ掛かっていた」と田島さん。

 そこで7~8年前に一度、1人で道を整備してみたという。しかし、昨年の台風で木々が倒れ、植物の状況も変わり、1人ではアラガクルの場所を見つけられなくなった。「今回、こうして道を開けることができ、本当に一安心だ」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 島の高齢者だけでなく、郷友会の方々からも訪れたいとの声があったという。

 田島さんは「新しい年の始まりとして、島に適度な雨が降り、田畑の準備が順調にいくよう祈願する大切な場所。いずれは、公民館が全部そろって祈願に来ることができるよう願っている」と話した。
(村松友紀通信員)