「物語観光」商品化へ 沖縄県、脱「素通り」目指す


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 脱「素通り観光」を目指し、物語性を持った沖縄の観光資源を「面」で捉えた広域観光ルート開発を進めようと、沖縄県は直接効果や県内自治体の広域観光連携の課題などについて初めて調査した。物語による新たな沖縄観光の推進により、点在する観光資源の面的活用だけではなく、観光客の域内での滞留・滞在時間の向上も図れる。各市町村は広域連携による誘客に関心を寄せているが、マンパワーや予算、ノウハウ不足などの課題が調査で浮き彫りになった。県は本年度、モデルコースの商品開発に着手する。

 県は1月26日~3月31日、県内41市町村と広域市町村圏事務組合3団体を対象に、広域連携や物語観光に関する取り組みをアンケート形式で調査した。

 各地域内にある物語性を持つ観光資源について「歴史・文化」と答えた市町村が最も多く24市町村あった。次いで「自然・秘境」と「伝統芸能」がそれぞれ15市町村だった。観光資源はあるものの、これらをつなげて物語性のある旅行商品開発に至っていない地域が多いと県は見ている。

 県は物語観光と広域連携について意見を求めるため、県内の有識者らによる検討委員会を開き、実際にモデルストーリーを検討した。最終的に沖縄固有の美しい海と歴史文化資源を活用した「海洋文化遺産群」と自然崇拝や祖霊崇信、信仰、聖地などを巡る「祈りの島物語」2案に絞り込んだ。

 一方で、広域連携施策立案について「検討中」と答えたのは15市町村、広域組織の組成や商品造成などを実施したことがあるのは9市町村あったが、8市町村が「方策やメリットについてよく分からない」と答えた。広域連携施策立案推進の課題では「人的パワーが不足している」が39市町村で最も多く、「市町村の枠を超えて活用できる予算が不足している」と回答したのは22市町村あった。

 県は本年度、広域連携型地域ブランド共創事業の一環として、旅行会社に聞き取り調査し、各地域の観光資源を活用した旅行商品開発に取り組んでいく予定だ。