木造新築2割突破 コスト安、強度向上で急伸 県内一戸建て


この記事を書いた人 新里 哲

 2015年に県内で新築された一戸建て住宅のうち、木造住宅の占める割合が2割を突破したことが9日までに県木材協会のまとめで分かった。鉄筋コンクリート(RC)住宅が主流の沖縄で木造住宅の比率は5%前後の推移にすぎなかったが、強度の向上や建築コストの安さを背景に、近年急速に建築戸数を伸ばしている。木造住宅は外気との温度差が少なく「本来、高温多湿の気候に適している」(県木材協会)とされ、需要はさらに増えると見込まれている。

 15年の一戸建てと長屋建て住宅の新築着工戸数は計3691戸。このうち木造住宅の建築戸数が791戸を占め、木造比率は21・4%に上った。05年は一戸建てと長屋建ての新築着工戸数3964戸のうち、木造の建築戸数は177戸にすぎず、木造比率は4・5%だった。

 新築着工戸数は年によって変動するが、木造住宅の建築戸数は08年以降、ほぼ右肩上がりで増加している。

 県木材協会の嘉数尚廣専務は「沖縄の好調な住宅建築に連動して木造も伸びてきている。標準的な住宅で比べればRCより安く建築できる点が大きい」と指摘する。これまで沖縄特有の台風やシロアリの被害から敬遠されがちだった木造住宅だが、「木造でも耐震性が考慮されるようになり、沖縄向けに各メーカーがシロアリ対策に力を入れている。家を建てる人の好みが多様化する中で、昔のような木造への否定的な印象は薄れている」と指摘する。

 沖縄の住宅は沖縄戦を契機に、戦前の伝統的な木造住宅からRC造りが主流となった。台風常襲地域に加え、終戦直後の米軍住宅の整備などを通じて米国式のコンクリート建築の技術移転が進んだことがある。

 一方、全国的な木造建築の流れでは、柱や土台の構造材をあらかじめ工場でカットして接合用の加工を行う「プレカット」工法が一般化し、工期の大幅な短縮などで建築費削減につなげている。木造住宅の最新技術と実績を持つ本土の大手住宅メーカーが沖縄の市場性を見込んで相次いで進出していることも、増加に拍車を掛けている。

 こうした中、県内で木造住宅を施工する業者や資材供給業者の12社が昨年10月に、県木造住宅協議会(長堂昌太郎会長)を設立した。嘉数専務は「地元の業者が関わらないと県経済への経済効果は出ない。関係者がうまく連携しながら木造の一層の普及に取り組む」と述べた。