カルテの音声入力、患者情報の共有も 救急搬送、DXで業務効率化へ 那覇市で実証実験


カルテの音声入力、患者情報の共有も 救急搬送、DXで業務効率化へ 那覇市で実証実験 患者情報を入力した端末データが連動する様子を説明する救急隊員ら=10日、那覇市役所
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 那覇市は10日、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用して、市消防局の救急搬送時間短縮や救急隊員の業務効率化を図る実証実験を16日から5月27日まで実施すると発表した。10日に那覇市役所であった定例記者会見で知念覚市長と市消防局の上原立也局長が報告した。那覇市立病院など8医療機関と連携する。同システムの試行は県内初。

 同局によると、従来の救急搬送業務は現場で患者情報を聞き取って紙に記入した上で、搬送先の病院ごとに口頭で説明している。搬送後は報告書の入力業務が必要だ。

 実証実験ではタブレット端末に患者の症状や搬送状況を音声入力したり、免許証やお薬手帳などを撮影したりしたデータを搬送先の病院と共有できるという。搬送先を探す際に複数の病院に同じ説明をしなくて済むほか、病院内でも医師や看護師の情報伝達が省かれることで迅速な処置につながる。

 同局が対応した2023年の救急出動件数は2万3701件で、1件あたりの平均時間は33・6分。全7台の救急車両が出払い、新たな要請に対応できないことが238回あったという。

 市はシステムの有用性を検証した上で26年の導入を検討している。本格稼働した場合は、1件あたり15分かかっていた報告書作成業務時間が半減すると試算しており、上原局長は「速やかに次の出動に移れるので市民サービスの向上にもつながる」と語った。

 予算は実証実験が約50万円で、導入の初期費用は約1500万円。2年目以降の運用費は290万円。知念市長は「市民の命に関わるのでシステムが有効的なら26年以前に導入する決断もある」と語った。

 (嘉陽拓也)