沖縄の衣服の虫よけ「ヤマクニブー」とは? 琉球の時代から受け継ぐ


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 【本部】沖縄で古くから衣服の虫よけに利用されている香り草ヤマクニブー。県内で唯一栽培されている本部町伊豆味で、刈り取ったものを蒸して乾燥させる加工の作業が6月24日、始まった。収穫から加工までの期間は梅雨が明けたこの時期に約3週間と短く、現在はその間に約2千束を製造する。昔は乾燥させてできた製品を束のまま売っていたが、現在は包装したり、巾着に詰めたりした商品としても販売し、人気を集めている。

 ヤマクニブーは和名「モロコシソウ」。琉球王朝時代から女官たちに愛用されていたとされるが、戦前戦後も各家庭で香りと防虫効果が親しまれてきた。

 加工の作業が始まったのは長年ヤマクニブー作りに携わる古堅千枝さん(95)宅。古堅さん自身は高齢のため6年前に引退し、婿の仲本兼一さん(78)、娘の康子さん(75)が受け継いでいる。

 古堅さんによると、以前は伊豆味で7、8軒がヤマクニブー作りに携わり、期間中、みんなで集めて約2万束を作り、那覇市の市場などに出荷していたという。だが今、携わっているのは仲本さん家族を含め2軒のみで、生産も約2千束に減っている。

 刈り取ったヤマクニブーを一束300グラム程度で束ね、大型の蒸し釜で約25分蒸す。その後、軒下で2日間程度干して乾燥させると、緑色から茶色に変わり、独特の香りを放つようになる。

 仲本さん夫妻も現役だが現在、娘の小百合さんが3代目として生産に加わっている。小百合さんは、友人で商品開発に取り組むオフィスユキコ(名護市許田)の谷口幸子さんの勧めで、ヤマクニブーを利用した新たな製品作りを進めている。束を色とりどりの包装紙で包んだり、大小の巾着に入れて若い人でも香りを楽しめるように工夫した。小百合さんは「若い人にも知ってもらい、親しんでもらえるよう工夫した。今は月桃やウコンなどとも組み合わせた新たな香料作りにも取り組んでいる」と笑顔で話した。

 6月24日に行われた加工開始式であいさつした本部町の平良武康副町長は「町としてどう支援できるか考えていきながら、ヤマクニブーを文化的な町の財産として絶やすことなく広めていきたい」と強調した。

(1)ヤマクニブーを約300グラムずつ束ねる作業をする仲本康子さん(奥左)と小百合さん(同右)=6月24日、本部町伊豆味
(2)束ねられたヤマクニブーを蒸すために、大型の蒸し釜に入れる作業をする仲本兼一さん
(3)乾燥したヤマクニブーについて説明する古堅千枝さん
(4)防虫作用のほか、ヤマクニブーの香りを楽しめるさまざまな商品