「守るべき人権が逆」 沖縄で犯罪被害者大会 加害者“保護”を疑問視


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦

 殺人や傷害、交通犯罪などの犯罪被害の当事者や遺族らでつくる九州・沖縄犯罪被害者連絡会(みどりの風)が16日、「第5回九州・沖縄犯罪被害者大会in沖縄」を沖縄県那覇市のホテルサンパレス球陽館で開催した。夫を殺害された宮城エツ子さん(66)と、息子を集団暴行で亡くした富永広美さん(62)が体験を語った。

 宮城さんは2004年、銀行の出張所長を務めていた夫の政敏さん=当時(54)=を「預金がなくなった」と一方的に思い込んだ男に刃物で刺され、殺害された。「夫は家族にとって大事な人だった。裁判で凶器の牛刀が示された時、犯人を刺して同じ痛みを味わわせたいと思った」と話し、憎しみを抑え切れなかったことを振り返った。

 賠償を求めて民事訴訟を起こし、判決も得た。しかし裁判所が開示させたのは男の預貯金残高だけで、不動産については原告である宮城さん側が調べなければならなかった。「被害者が金を使って調べなければならないのはおかしい。裁判所は犯人の財産を開示するようにしてほしい」と法制度の改正を求めた。

 「普通に過ごすことが、私の人生まで犯人に奪わせないことになる」と前向きに生きる姿勢でいることを説明したが「人々が新年を祝う正月が、一年で一番つらい」と苦しい胸中を語った。

 富永さんは1996年、次男の政貴さん=当時(16)=を少年5人の集団暴行で亡くした。報道では政貴さんの飲酒や告げ口などが原因のように報じられたが、政貴さんは一滴も酒を飲んでおらず、告げ口も作り話だった。「加害者は手厚い法の恩恵を受け、悪いことをしていない息子は世間の好奇の目にさらされ踏みつけにされた。守るべき人権が逆だ」と憤りを隠さない。20年がたった今でも、賠償金は約束通りには支払われていないという。「民事訴訟で勝訴しても、被害者側は二重三重の重荷を背負う。救われない」と話す。

 それでも「少年犯罪被害当事者の会」に加わり、法改正を求める活動にも参加。遺族による事件記録閲覧ができるようになるなど、少年法改正につながった。「全国で被害者や遺族が声を上げたことで法律は少しずつ変わってきている」と話した。

 琉球大の学生らもボランティアとして参加した。琉球大大学院で臨床心理学を学ぶ林亜美さん(24)は「事件後も長く苦しみを抱えていることを知った。臨床心理士になって、話を聞くことで少しでも気持ちを軽くする手伝いをしたい」と話した。