「沖縄拠点に世界へ」 台湾大手セメント会社副社長、ホテル進出で戦略語る


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 那覇市の国際通りと豊見城市豊崎に大型ホテルを建設する予定の台湾大手セメント会社、嘉新水泥(チアシン・セメント、台北市)がこのほど、両ホテルの戦略を明らかにした。国際通りのホテルは同社初めての直営ホテルとなり、沖縄を拠点に今後世界進出への足掛かりとする。那覇市が整備する新市民会館などと連携し、周辺地域の活性化も図る。豊崎では大型リゾートホテルを計画しており、観光客だけではなく、MICE(国際会議や報奨旅行など)客の誘致にも力を入れる。

 嘉新によると、国際通りのホテルは雇用人数200~300人を予定。同社として初のホテルブランドをつくり、観光客が多い沖縄での知名度向上を図ることで、日本本土、欧米への進出も視野に入れる。

 ホテル内に台湾料理などを提供するレストランも備える。

 台湾の大学や専門学校などとも連携し、学生らの就業体験を受け入れる。那覇市が久茂地小学校跡地に建設を計画している新文化芸術発信拠点施設(新市民会館)などにケータリングを提供するほか、利用者に宿泊や食事などをしてもらえる施設として整備していく方向で調整している。

 豊崎ではアーバンリゾートビーチホテルを計画しており、ホテルの敷地内に娯楽施設や物品販売店舗などを設置し、宿泊客が少なくとも2泊3日以上で利用するよう想定する。

 国際通りのホテルとも連動し、宿泊客が沖縄を訪れる期間中に両ホテルでの滞在を誘致する。観光客だけではなく、ホテル内に会議場を整備し、MICE客と地元客の利用も視野に入れる。

 同社の王立心(おうりつしん)副社長は琉球新報の取材に対し「今後われわれのホテルを利用した宿泊客に良い経験を提供し、再度沖縄を訪れるようなリピーター客につなげていきたい」と意気込んだ。(呉俐君)

◆「地元客来る国際通りに」王立心・嘉新水泥副社長

王立心・嘉新水泥副社長

 台湾大手セメント会社、嘉新水泥(チアシン・セメント、台北市)の王立心(おうりつしん)副社長に沖縄を投資先として選んだ理由や、沖縄観光の課題などについて聞いた。

 -嘉新のホテル事業の概要は。
 「関係企業の雲朗観光は現在台湾で10ホテル、イタリアで5ホテルを展開している。嘉新水泥が直営しているホテルはないが、雲朗観光がローマの中心地で運営しているホテルに投資している。投資を通して、ホテル運営のノウハウも得たため、これまで直営ホテルの開発場所を探してきた」

 -沖縄を選んだ理由は。
 「嘉新はイギリスやイタリア、日本本土など多くの街を検討してきた。3年前は日本国内の投資先として東京が最も注目され、沖縄にはあまり関心が集まらなかった。われわれにとって、沖縄の風土や環境などが非常に理想的で、さらに初めての直営ホテルのため、台湾に近く、人と人の距離も近い沖縄を選んだ」

 -国際通りのホテルブランドは。
 「嘉新グループ初の国際ブランドをつくりたい。シンガポールのシャングリ・ラや香港のザ・ペニンシュラホテルズと同じように、欧米へ進出できるようなブランドを目指したい。五つ星レベルの施設やサービスを提供するが、料金は四つ星半クラスを考えている」

 -沖縄ではホテルの建設が相次いでいるが、どう差別化を図るか。
 「県や那覇市からはローマで運営するホテルのノウハウを沖縄に持ってきてほしいと要望があった。国際通りと連携できるような施設として整備するように求められた。この街の一部として溶け込んでいきたい」
 「国際通りは観光化が進み、地元客が来なくなっている。複数の県内企業と連携し、地元客も来る場所にしたい。一緒に国際通りを変えていきたい」

 -沖縄観光の課題は。
 「沖縄でホテルやレストランの人材を積極的に育成していく必要がある。同時に海外の人材が県内で働ける規制緩和も重要だ」
 「沖縄を訪れる観光客は日本人客が最多で、次いで東北アジア客が占める。持続発展できる観光地として今後欧米客の誘致も大切だと思う。そのため那覇空港国際線ターミナルビルの拡充なども欠かせない」(聞き手・呉俐君)