マンゴーの「時限爆弾」止めろ 県職員の澤岻さん、病害防ぐ新技術確立


社会
この記事を書いた人 志良堂 仁
上野正実会長(左)から第10回沖縄農業研究会賞の表彰を受けた澤岻哲也さん=12日、糸満市の県農業研究センター
(左)マンゴーの炭疽病(右)マンゴーの軸腐病

 マンゴーに黒い病斑や腐敗が現れ、消費者からのクレーム要因となっている炭疽病や軸腐病の被害を抑えようと、県農業研究センター名護支所の澤岻哲也さん(42)は、薬害を出さずに発病率を9割近く抑制する薬剤散布体系などの防除技術を確立させ、県内農家への普及が進んでいる。二つの病害は潜伏感染のため、収穫時にはきれいな果実であっても、輸送過程で発症・進行してしまい、市場での信頼を損なう深刻な課題となっていた。

 澤岻さんは、つぼみが付く1月から収穫の6月まで長期間にわたり、炭素病菌が潜伏を続ける可能性があることを初めて明らかにした。また、市販のハンダゴテを改良した器具を、収穫直後のマンゴーの果梗(かこう)部(実につながる枝の部分)に押し当てることで、軸腐病菌を熱処理する方法を考案した。

 澤岻さんは「収穫された果実の熟が始まると、潜伏していた菌糸が侵入し発病する。畑で時限爆弾がセットされ、消費者の所で爆発するような仕組みだ。産地ブランドの評価に影響を与えることから、ほ場での根本的な防除技術が求められている」と語り、確立した技術の普及にも自ら取り組んでいる。

 研究成果は、沖縄農業に貢献した若手研究者を表彰する第10回沖縄農業研究会賞に選ばれ、12日に糸満市の県農業研究センターで授賞式があった。沖縄農業研究会の上野正実会長は「沖縄の戦略的果実の病害を抑える重要な研究であるとともに、普及における効果が大きい」とたたえた。

 二つの病害とも、飛散する胞子が付着することで感染する。ビニールハウス内であっても摘果後の実や枯れ葉が腐敗し、病原菌が生息する感染源になることから、澤岻さんは「残さを速やかに処理することは防除効果がある」と指摘。ほ場内を清潔にすることで薬剤の使用も低減できるとした。

 研究では、果実や葉に黒い斑点が生じる炭疽病の発生経緯について、マンゴーの木に頂芽が形成される1月の時期から潜伏感染することが判明した。澤岻さんは「年越し前から防除を始めることが重要」として、12月から年が明けた収穫期(6月下旬の袋かけ)までの体系的な薬剤散布スケジュールを作り上げた。ほ場試験により、体系散布を実施した区域では、無散布区の約12%にまで発病率を抑えることが示された。