北部着陸帯工事 国、農道での搬送検討 自衛隊ヘリ案も浮上


この記事を書いた人 志良堂 仁

 米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)移設工事で、伊集盛久東村長が村道を使用しないよう求めていたのに対し、防衛省がなお村道や村が管理する農道の使用を検討していることが28日、分かった。防衛省内では、農道なども不可能な場合、重機などの資材をヘリで空輸することや、最終手段として自衛隊の輸送ヘリを使う案も浮上している。

 市民の反対運動や村長の村道使用反対で工事の行き詰まりを懸念する政府は、さまざまな代替案の検討に入っている。が、県民の反対が根強い基地建設に自衛隊機を使用すれば、異例の強行策に批判が高まるのは必至だ。

 伊集村長は今月15日、東村役場で中嶋浩一郎沖縄防衛局長と面談した際、工事車両の村道使用反対を伝えた。中嶋氏は高江集落内の村道については「使用しない」と明言していたが、集落外の村道や農道については「今後も話し合いをしたい」と応じるにとどめた。

 防衛省関係者は「村長からの要望という認識だ。通常、村道の通行を村が法的に規制する権限を持っているわけではない」とした。

 一方で伊集村長は「防衛局も別の方法を考えて、使わない方向だと聞いている」と述べ、認識は食い違っている。

 農道を使わない場合、新たに道を整備する必要があり、工事が遅れる可能性があるが、伊集村長は「遅れは間違いない。村民、区民からの苦情を解消させるには遅れることはやむを得ない」との認識を示した。

 他方で防衛省は、村道の使用制限や市民の抗議運動で資材運搬が行き詰まった場合、国内に数機しかない民間の特殊ヘリで重機などを運ぶことも検討。自衛隊のCH47大型輸送ヘリも案に挙がっている。

 ただ自衛隊機による米軍基地への資材運搬には、日米合同委員会での合意に加え、大臣命令の手続きも必要になるといい、「政治的なハードルや批判を受けるリスクは高い」(政府関係者)として、最終的な選択肢として検討されている。

 工事車両の行き来が予想される新川ダムの堤防にかかる村道には10トンの重量規制がある。防衛省はその区域だけ重機を運搬車両から降ろし、自走させて重量規制から免れる案も検討している。