生活保護の返還要求 那覇市 奨学金を収入認定


この記事を書いた人 新里 哲

 生活保護受給世帯の娘2人が高校に通うために借り受けた返済の必要がある貸与型奨学金約100万円を、那覇市が収入と見なし、5月に世帯主の女性(46)に生活保護費93万1千円の返還を求めていたことが、1日までに分かった。同市は2015年にも奨学金が収入に当たるとしてこの女性に保護費返還を求めたが、必要な調査を市がしていないなどの点に瑕疵(かし)があるとして、県が市の処分取り消しを裁決しており、2度目の返還請求となる。女性は返還処分の取り消しを求めて8月、県に再度審査請求した。

 審査請求書によると、女性の長女が12年4月分、次女が13年4月分から県国際交流・人材育成財団の奨学金貸し付けを受け始めた。月1万8千円で、女性が保護費受給を終了した15年3月までの計56カ月で100万8千円の貸与を受けた。

 那覇市は15年4月、奨学金全額を収入と見なし、同額の保護費返還を請求。女性は処分を不服として県に審査請求し、県は同8月に処分を取り消す裁決を出した。裁決を受けて市は同年10月に返還請求を取り下げたが、16年5月に返還額を7万7千円減額して再度請求した。

 裁決で県は、奨学金を受けることを市に事前に相談しなかった女性に瑕疵があったと指摘する一方、市も事後的には貸し付けを承認していたと認定。その上で、貸し付けがあったそれぞれの時点で「就学経費を必要とする事情がないか」などの調査をしなかったことなどに市の瑕疵があるとしていた。

 女性から相談を受け支援している川田浩一朗弁護士は、借り受け時に市が調査をしていれば、教材費など保護費で賄える支出もあったと指摘。「裁決で指摘された瑕疵も回復していない。これが認められれば、生活保護家庭は奨学金が受けられないことになる」と市の対応を批判した。

 那覇市福祉部の新里博一部長は「県の結論が出るまでは中身について答えられない」と話した。

 識者は「生活保護世帯の自立に向けた学習の費用を認める流れがある中、今回の市の対応は時代に逆行している」と指摘する。
(大嶺雅俊、稲福政俊)